4.《ネタバレ》 ジョン・フォード監督の西部劇を見るのは初めてだったが、とにかくあらゆる意味で圧倒された。
50年前の映画ではあるが、映画の「質」に関しては、製作年度などは関係ないということがよく分かる。
美しい風景、荒々しい演技、壮大なストーリー、容赦のない描写、清涼的なユーモア、すべてが素晴らしい仕上がりとなっている。
インディアンに対する激しい憎悪が感じられるが、妥協を許さない姿勢の表れではないだろうか。
ただし、この妥協を許さない姿勢を貫くとすれば、意表を突いているがラストのひねりのないハッピーエンドは少々いかがなものかと思う。
この描き方では、中盤のイーサンとマーティンの対立に深い意義が生まれてこない。
お互いに銃を向け合い、「I hope you die」とマーティンがイーサンに対して罵るに至るまでを描くのならば、もっと悲惨なラストを迎えさせてもよかったのではないか。
そうでなければ、イーサンの心境の変化が表れるようなエピソードをいくつか加味すべきだったのではないか。
やはり、姪を助け出そうとするものの、姪が完全にインディアンに染まってしまい、逆にイーサン側に攻撃しかけようとする展開となり、やむを得ず姪を射殺してしまうとすると、悲劇性がより高まると思う。
ラストをハッピーエンドに描きたいのならば、二人の対立をソフトに描くべきではないか。
中盤でイーサンが姪に対して銃を向け、イーサンとマーティンが対立するようなことはむしろ描かず、単純に姪を救出しようとするところ、インディアンに阻止されて矢傷を負って失敗するという流れだけでもよかったような気がする。
それにしても、演出もなかなか工夫に満ちている。
手紙を利用したユーモア溢れる技巧的な展開も好印象だ。
単調になりがちな展開に味が出ただけでなく、あの家族と郵便配達人の存在が増す流れとなった。
また、冒頭に扉を開けて、イーサンを出迎えるシーンに始まり、ラストで同じようなカットでイーサンがひとり荒野へ戻っていくシーンで終わるというのも、ジョン・フォードのセンスの良さが感じられる演出だ。