1. 巨匠フレッド・ジンネマンの有終の美を飾る遺作となった映画がコレ。渋さで売り始めたコネリーの魅力をJ・J・アノーやデ・パルマより誰よりも素早く見抜き、主演に据えた慧眼は流石。しかも、サイレントの巨匠エリッヒ・フォン・シュトロハイムの傑作「アルプス颪」を連想させるが如き重厚な山岳映画である。CGやらSFXなんぞ一切使わなくとも「クリフハンガー」や「バーティカル・リミット」なんかよりゃ遙かに秀抜な登山場面は演出力とカメラワーク次第で撮れるのである。要はセンスの問題であり、そこが人の心を打つ分かれ目なのではないかと考えたりもする。主演のコネリーのみならずベッツィー・ブラントリー、ランベール・ウィルソンもジンネマンの演技指導により目を見張る好演。名監督とは俳優の持てるポテンシャルを存分に引き出せる監督であり、その意味でジンネマンは矢張り優れた名伯楽であったのだなぁと意を強くした。ただ、97年に亡くなるまでの15年間にあと1作は発表して欲しかった…!それだけが心残りでつくづく惜しまれる。