2.《ネタバレ》 先に「デカローグ」第6話を観ている方とこの作品を先に観る方で印象が若干異なるかと思います。私はデカローグのこの話が大好きだったので、未公開映像を含む第6話の完全版を観られた気がして、初見の驚きこそ無いものの楽しく観る事ができました。
恋愛未経験の不器用な青年トメク、男に不自由していないようで満たされない年上の女性画家マグダの二人の距離が縮まる様子は出来過ぎな展開はあれど、とてもピュアで人間臭くて憧れます。デカローグよりも映画のほうが女性マグダの終盤の行動が違う事で、トメクに追いかけられて気づく愛情と併せてマグダ自身の再生のような印象をより強く受けました。そして男性視点と女性視点によっても、物語の受け止め方がすこし変わるかもしれません。
トメクが寄宿する友人の母親がトメクの望遠鏡でトメクとマグダのやりとりを見つめる様子が、トメクを心配する気持ちと同じく、マグダの自由奔放さと若さに嫉妬する孤独な女性に感じ、この女性もまた孤独のつながりの先の愛情に飢えてるのかなとも思えたりしました。
キェシロフスキの感情表現を抑えた演出が、この作品を単にベタな恋愛メロドラマにせず完成度の高い人間ドラマに昇華させていると思います。