1.本作は、ヴェネチア映画祭で金獅子賞(グランプリ)を獲っているにも関わらず、他のロッセリーニ作品と比べると知名度としては多少落ちるものがある。
しかも獲られた年代も1959年ということで、かなり後に獲られた作品だ。
全盛期的なイメージのある1940年代ですらあんまり楽しめなかったのだから、そんなに晩年の作品じゃあ大したことはないだろう・・・と踏んでいた。
しかし、映画好きの方々の評判をチェックすると、ロッセリーニ作品の中でも本作は、一際評価が高いのだ。
歴史的背景を熟知していないと、完全にはそのストーリーを理解することはできないであろう内容であり、私もそんなに世界史には精通していないので、ところどころ理解できない部分があった。
しかし、その様なレベルの鑑賞者さえも十二分に楽しませるだけのパワーがこの作品にはあった。
特に主演のヴィットリオ・デ・シーカの演技が素晴らしい。
デ・シーカと言えば名作『自転車泥棒』の監督というイメージが強く、まさかこんなに演技がうまいだなんて思ってもいなかった。
しかしそれは単に私が無知であっただけで、デ・シーカは元々、プロの俳優として映画界に入ってきたとのこと。
そして本作は、そのデ・シーカとロッセリーニが初めてタッグを組んだ作品でもあるのだ。
どこかのサイトで誰かがこう評していた。
「イタリアン・ネオ・リアリズモのニ大巨匠、ロッセリーニとデ・シーカが、イタリアとイタリア映画の意地を大いに見せ付けてくれた名作」
であると。
まさしくその通りに感じた。
又、デ・シーカ役の軍人と敵対する国の大佐を演じた、ハンネス・メッセマーの名演も光っていた。
これがとてつもなくかっこよい。
一発で彼のファンになってしまった。
132分という長尺である為、さすがに途中で多少だれるが、後半はまた息を吹き返し、展開も一気に変わってくる。
前半と後半とで、主人公の雰囲気が全く変わってくるのも観ていて楽しかった。
最後はあっと言わせる展開があり、底知れぬ余韻を残す。
それはあの『無防備都市』をも上回る素晴らしいラストだった。