4.《ネタバレ》 ジャン=ジャック・ベネックスは「ベティ・ブルー/インテグラル完全版」が凄い面白かった。
この作品も、退屈な部分が多いが最後まで見てしまう仕掛けと魅力に満ちた映画だ。
独特な雰囲気が漂う「歌の花火(淀川長治さんいわく)」とも言うべきサスペンス映画。
ファーストシーンにおける「歌姫(ディーバ)」の熱唱から全ては始まっていた。
タイトルの「ディーバ」の如く、登場人物たちは様々な音に包まれて日々を暮らす。
己の歌に誇りをかける「歌姫」と呼ばれるオペラ歌手、「歌姫」に惚れ込んだ郵便配達員、「波の音」を聞くためにパズルを組み続けるギリシャ人、「シャンソン」を聴きながら仕事をする殺し屋などなど、音に支配されているとも言える人物模様。
物語は静かに進むが、徐々に複雑になっていく事件、一見無駄とも思えるシーンにバラ蒔かれた複数のガジェット(本当に無駄なシーンも多く退屈だけど)、驚愕の真相、二重、三重、四重の追走劇、そして予想もしなかった顛末。
時にはヒッチコック、時にはルネ・クレマン、時にはトリュフォー、時にはフリードキンと様々な監督の“音”が聞こえてくる。
それを包み込むベネックス流の世界観。
正に映画好きが練り上げた、映画好きのための映画。