5.《ネタバレ》 ローラ・ローラ、別に悪女じゃありませんよね? 少なくとも自覚のある悪女ではない。むしろこの教授があほというか、真面目すぎて勝手に自滅した感じ。「美しいって罪よね」という言い回しがあるけど、この人に罪があるとしたら魅力的過ぎることぐらいだ。マレーネ・ディートリヒは不思議なオーラを持った人で、脚線美なんかは今見ても目がちかちかするぐらい眩い。真面目一辺倒に生きてきた人が虜になってしまうのも無理はないと思わせる。
教授がプライドを捨てて笑いものにされる場面はあまりの痛切さに胸が詰まる。だけど教授を玩具にした座長も根っからの悪人というわけでもなくて、後から教授に謝罪する。教授をあんな状況に追い込んだのは、他でもない教授自身なんだよね。
誰が悪いというわけじゃなく、自らの純粋さゆえに破滅する。この巨漢のおっさんを「天使」と形容するのは抵抗があるけど(そういえば生徒たちの落書きに天使のように翼を生やした教授のイラストがあったなあ)、彼の行動は美しい光に飛び込んで羽根を焼かれてしまう天使のような、純粋な愚かさに端を発するものだ。だから彼の行動を笑いものにすることができないのだろう。ただただ切なく、やるせなかった。