5.《ネタバレ》 エンターテインメント作品を期待すると、何も起こらないシュールな作品だということになるらしい。
アーティスティックな描写もなく、美しさが現れるときでも、常にリアリスティックではあるが、一流の芸術作品の水準に置かれた上質の映画である。
この映画にはいかなる失策も存在しない。それはエンターテインメント映画が多様な失策によって観客の注意を引くことの対極である。
ユニークな場面も、シリアスな場面も、ナンセンスな場面も、全てがひとつに調和している。
このお喋りな映画が、どれほどの「芳醇な静かさ」を醸し出しているか。
ありふれているように見えるのだろうか、私は普段暮らしている中で、こういった「温かい上品さ」には稀にしか触れることができないように思う。