1.《ネタバレ》 愛の不毛というアントニオーニらしいテーマ。すでに消え去ってしまった愛情と、突然のタイミングで生まれる愛情。新しく生まれた愛情は刺激的で、サスペンスを感じさせるほどのスリルと熱狂のなかにある。一方で、消え去ってしまった愛情に対しては、自分の書いた愛の詩さえも思い出せないくらい、無意識に過去のものになってしまう。もしかしたら、自分も誰からも愛されることなく死んでいくかも知れないという恐怖。愛が消えてしまったという事実、その有限性に恐怖し、抗おうとする男。偽りの関係の中で人は生きていける存在であるならば、その一つ一つの人生とはなんと孤独か。アントニオーニらしい斬新な構図は、『さすらい』のような牧歌的な風景よりも建築物内という本作品の環境の方が多様なアングルが楽しめて断然面白い。車の中の空間の持つ特異性を色んな監督が実証しているが、ドシャ降りの中にある車の空間を外から撮るってのは面白い。