2.《ネタバレ》 フランス映画が生み出した幾人もの名匠・名監督の中で、私にとってベッケルはたまらなく大好きな一人。監督としての器や世界観だけなら師匠ルノワールの方が上かもしれないが、映像作家としての技量(アクション/日常の穏やかな描写=緩急付けたメリハリのある描写で写し出すところとか)・出演俳優の魅力を存分に引き出しているという点では間違いなく彼の方が上手い、と個人的には思っている。でこの作品。芋みたいなレジアニ、ぽってりなシニョレをここまで魅力的な美男美女に描き出した事自体(特に愛する事を知ったシニョレの表情はまさに官能的)凄いのだが、緩急使い分けた描写=シニョレをのせた船が水面を走り、隠れ家にいるレジアニを尋ねるその美しさ/刑務所からの逃亡劇~親分を射殺するまでの緊迫感あふれるアクションそして断頭台のラストシーンまで、テンポのある語り口で見せてくれる彼の作風にしびれっぱなしですわ。「穴」「モンパルナスの灯」にも負けず劣らずな名作だよ、これは。