3.この頃から特に60年代以降、遺作の「脱獄の報酬」に至るまで、いくつものフレンチ・ノワールで印象に残るギャングの大物や老ギャングを演じたジャン・ギャバンですが、このジャンルでの代表作はやはり本作になるでしょうか。
ほとんど表情を変えない中に見せる喜怒哀楽。女への少々キザな台詞も、何気ない1つ1つの所作も、その全てが渋くカッコいい。威圧感・凄味と品を見事に両立させてみせます。そしてまだ新人のリノ・ヴァンチュラも見事にギャバンの相手役を演じています。
そんな裏社会に生きる男たちのドラマに時折、そして実に効果的に挿入される“グリスビーのブルース”。そのどこか哀愁を帯びたハーモニカの音色がたまらない。
相棒も金塊も取り戻す痛快なラストもいいのかもしれませんが、こんな結末もまた、フレンチ・ノワールにはよく似合うと思います。