33.終わりの方、シーツを干してる奥さんと、ザンパノ、二人の間にあるのは有刺鉄線の柵。何だか、健康的な普通の生活とは隔絶されて、もう決して立ち返ることができなくなったザンパノを象徴しているようで、妙に印象に残っているシーンです。 【鱗歌】さん 8点(2003-08-13 20:49:22) (良:3票) |
32.私にはなぜかこの二人の道行きがそれほど酷いものに見えなかった。砂浜で語り合う二人は素朴でくすぐったくて、少し幸せそうに見えた。社会の底辺で揺られながら暮らす二人の姿を思い出すにつけ、優しいテーマ曲も一緒に頭の中に流れてきて胸に堪える。くるくると目で喋るジュリエッタ・マシーナも愛らしかったけれど、粗暴で自分勝手で、心の在処が分からずに回り道をし、ラストに慟哭するザンパノという男を演じたアンソニー・クインの姿が瞳に焼き付いている。また、彼の行動を一歩離れて見つめ、突き放すことのできない感情を観るものに与える監督の手腕も素晴らしい。 【のはら】さん [DVD(字幕)] 8点(2007-09-17 02:01:42) (良:2票) |
31.《ネタバレ》 ラスト20分は観ていて辛かった。ザンパノとジェルソミーナの旅道中は一体何年に及んだのだろう?“~年後”と簡単に出さず、時間経過に言及されていないため、2人の表情や言葉などから観る側が想像するしかない。これも監督は十分承知の上での演出であろう。そして、折角2人が夫婦としてやっていけそうになって来た矢先の悲劇。心を病んだジェルソミーナを見捨てたザンパノの苦悩にも同情の余地はあるが、何とも心苦しいばかりである。目覚めると一人ぼっちだった時のジェルソミーナの表情や気持ちまで観る側に委ねられているのは残酷なのか救いなのか。その後も一人で芸をして過ごしていた姿を想うと、胸が締めつけられる。ジェルソミーナの純真無垢そのものと言えるどんぐり眼(まなこ)が忘れられない。 【やすたろ】さん 8点(2004-04-09 00:51:49) (良:2票) |
30.《ネタバレ》 世間的に生き辛さを抱えている男女の恋愛映画ってのは一つのジャンルとして確立されていますが、本作はそんなジャンルの決定版。私がこの映画を観て一番心を引かれる部分は、最初はジェルソミーナを主人公として進む話が、ザンパノが旅芸人を誤って殺してしまってから唐突に主人公がザンパノに替わってしまう所。正直、序盤から中盤にかけてジェルソミーナから見たザンパノは完全に共感できない人物です。ジェルソミーナを放っておいて女を引っ掛けたり、直ぐに喧嘩をおっぱじめたり、とんでもないジゴロな男に見えます。そんな彼が主人公に替わってみるとザンパノという人が途轍もなく愛おしく思えてくる。 これは別に彼が可愛いとか言っているのではなく、人生における自分の暗部そのもののように思えてくるのです。私は正直今まで生きてきて、好きな相手なんだけれど深く傷つけてしまったり、それに対してちゃんと謝れなかったりしたことがあります。恋人が重い鬱病に罹ってしまって、一緒に頑張ってみたものの辛くて最終的に別れてしまったこともあります。そんな誰にでも多かれ少なかれある人生の情けなさをザンパノは象徴しているのだと感じました。だから彼が最後に死んだジェルソミーナのことを想い海辺で号泣するシーンは非常に観ていて辛かった。自分の最も情けない部分を見せ付けられた気がしましたから。 【民朗】さん [映画館(字幕)] 8点(2013-01-22 22:33:44) (良:1票) |
29.主役二人の性格俳優ぶりがとても際立っている作品。 粗暴なキャラのアンソニー・クインも適役だったが、 やはりジュリエッタ・マシーナの表情豊かな演技に惹きつけられる。 一風変わった設定の二人の関係がとても面白く、まるで古い日本の夫婦像にそっくり。 ラストの展開はちょっと唐突かなという印象もあるけど、テーマはしっかりと伝わってくる。 最後までリアルさを徹底的に追求した作り。後を引く余韻。名画です。 【MAHITO】さん [DVD(字幕)] 8点(2011-12-03 07:20:39) (良:1票) |
【CBパークビュー】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-07-31 21:52:45) (良:1票) |
27.《ネタバレ》 自己を不必要に低く評価し、好きになる事・好かれる事に生きる意義を求め、どんな扱いにもひたすら従順なジェルソミーナ。壊れてしまった都合のいい女を持て余し見切りをつけたザンパノ。支配する者とされる者の恋、上下の隔てのある恋をまざまざと見せつけられました。「好きだ」の一言をかけてもらえなかったジェルソミーナの胸中は察するものがあります。砂浜に突っ伏するザンパノの姿は、何の痛痒も感じぬ事に比べ救いがあるのかもしれませんが、お前はこの先どのように生きるのかと作者が問うているように見えました。 |
26.犬と同じ次元に生きていた男の魂の遍歴。 なんといっても天使かと思えるほどのジェルソミーナの純情さには心が震えます。 音楽が豊潤で素晴らしい。 ジェルソミーナも哀れだが、ザンパノもとても哀れに感じ、愛着を感じてしまう。 特に、海に二人で行くシーンは微笑ましく、私は一番好きだ。 【タックスマン4】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2009-02-10 00:37:50) (良:1票) |
25.この映画をみていると「ジェルソミーナは本当はこうした方がよかったんじゃないか」などとつい言ってしまいたくなるが、そういう投げかけはどうも野暮に思える。なぜならジェルソミーナが必死だったからだ。 【クリロ】さん 8点(2005-03-23 08:11:42) (良:1票) |
24.《ネタバレ》 アルコール中毒の夫や暴力を振るう夫から離れられない妻は「私がいなかったらこの人は駄目な人なの」という言い分が多い。夫には自分が必要不可欠という思い込みだ。 ジェルソミーナを見ているとそれを強く感じた。 これは他者に必要とされることで、自分の存在意義を見出そうとしている人に多い。 自分自身に対する過小評価のために、他者に認められることによってしか満足を得られず、そのために他者の好意を得ようとして自己犠牲的な献身を強迫的に行なう傾向がある。 自立した男女の愛ではなく、支配したり支配されたりのドロドロの関係である。 ジェルソミーナの場合は愛するよりもとにかく愛されたかった人だと思う。 彼女の生まれ育った境遇を考えるととても同情を覚える。 一見、ザンパノがジェルソミーナを支配しているようにも見えるが実は彼女がザンパノを支配していた。「支配」という言葉はそのまま「依存」に置き換えてもらったほうが分かりやすいかもしれない。 ザンパノの暴力は増し、盗みを働き殺人を犯し、この先どうなるかと思ったが皮肉なことだがジェルソミーナから離れたことによって彼は変わることができたのだと思う。 この先2人が共依存の関係を続けていても救いはなかったはずだ。 ザンパノが失ったジェルソミーナをあそこまで嘆き悲しむことができたのは唯一の救いだと思った。 【花守湖】さん 8点(2004-09-11 10:58:23) (良:1票) |
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23.《ネタバレ》 ザンパノにとってジェルソミーナは妻であるとともに奴隷でもあるんです。お金で買ってるわけですから。なので現代の夫婦関係とは一概に比べられません。ジェルソミーナは何度も逃げようとしますが、ザンパノが自分のことを妻として必要としていることに気づかされザンパノと生きていこうと決めます。人に頼って生きてきたジェルソミーナにとって人に必要とされる喜びは格別に大きいのだろうと思う。お互いに必要としあう人間と出会うということは人生において宝である。ザンパノはそのことに気づくのが遅すぎた。人を人と思わないザンパノがそのことに気づいた時、初めて人間らしく涙する。やるせない。 【R&A】さん 8点(2004-02-23 12:37:42) (良:1票) |
22.「ラスト・サムライ」が殺戮を肯定する映画でなく、「仁義なき戦い」がヤクザを肯定する映画でなく、「ゴッドファーザー」がマフィアを肯定する映画でなく、「俺たちに明日はない」が強盗殺人を肯定する映画ではなく、「大丈夫日記」が重婚を肯定する映画でなく、「ルパン三世・カリオストロの城」が窃盗を肯定する映画でないというのと同じ意味で、本作は男の身勝手さや暴力を肯定する映画ではないと思います。後半で正気と狂気の間をさまようジェルミソーナの、正気に戻った時の表情の優しさ、美しさが忘れられない。 【ぐるぐる】さん 8点(2004-02-09 15:52:11) (笑:1票) |
21.なんとも救いがない映画だけれど、弱いものを丁寧に描いていることで好感が持てます。 「石に意味が無ければ、全て無意味だ」というのは心に残りました。 【くろゆり】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2019-12-17 22:24:02) |
20.《ネタバレ》 粗暴な旅芸人“ザンパノ”は、己の体に巻きつけた“鉄の鎖”を、何百回、何千回と引き千切り続ける。 その様はまさにこの剛力自慢の愚か者が、己の犯した“罪と罰”に雁字搦めになっていることを表している。引き千切っても、引き千切っても、彼は自ら鎖を巻き続けるのだ。 きっとこの男は、この映画に描き出されていない部分においても、大なり小なりあらゆる罪を犯してきたのだろう。 そんな男の前に現れた“ジェルソミーナ”の存在とは果たして何だったのか。 罪深き男に贖罪の機会を与え、愛を知る権利を与えるための「救済者」だったのか。 それとも、彼が辿るべき「道」を決定づけるための「裁定者」だったのか。 更なる大罪を犯し、愛を知る機会を自ら踏みにじったザンパノは、ジェルソミーナのもとから逃げるように立ち去る。 そして、この愚か者は、それから数年経ってようやく自分の人生においてかけがえのないものを失っていたことに気づく。 初めて、己の罪に対する懺悔と後悔に苦しみ嗚咽を漏らし咽び泣く。 しかし、夜の海の波は、そんな嗚咽など嘲笑うかのように消し去る。 ザンパノは、血管が切れて目の光を失うその日まで、無間地獄のように、延々と同じ口上を繰り返し、鉄の鎖を引き千切り続けることだろう。 【鉄腕麗人】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2018-04-04 23:02:34) |
19.ジェルソミナのテーマが有名だが、中の音楽はすべていい。フェリーニ映画はロータの音楽とコミで評価したい。中盤のカトリック祭の音楽が、私は好き。ザンパノのもとを逃げたジェルソミナが出会う三人の音楽隊、楽隊と言うほどではなく、祭へ向かう音楽愛好家仲間なのか、管楽合奏で、ミーミー、ミードラファーラド、ミーーファソファ、ミー、と短調だけど陽気に行進していく。ついつられてゆくジェルソミナ。やがて祭の場へ至るとその音楽が、ひなびた味わいを残しながらも重々しく響き渡る。ジェルソミナが綱渡りの男に出会う場だ。この男は背中に天使の羽根のような飾りをつけており、ザンパノの獣性と対照される神がらみのキャラクターのようだが、どちらかと言うとトリックスター的で、ザンパノを裁く役割りでなく同列の扱い。フェリーニにとってはカトリックの神も単純に救いをもたらさないってことだろうか。カトリックってものが、あの音楽によって表わされてた気もするのだ。庶民的にひなびながらもやはり重苦しい面もある、ってところ(フェリーニとカトリックでは『ローマ』の教会ファッションショーの場でも音楽が雄弁だった。ミーレシーレ、ミードラード、ミーシソーシ、ミー、ってやつ。あのシークエンスは映像と音楽のコラボの傑作だった)。フェリーニは『甘い生活』の前と後で世界が変わったようにも見えるけど、たとえばこれのラスト、「一人でたくさんだ」と叫ぶザンパノの孤独は『カサノバ』のラストの孤独で反復されたようにも見え、ちゃんとつながっているんだな。 【なんのかんの】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-02-11 10:15:52) |
18.《ネタバレ》 ウディ・アレンがこの映画をとても好きというのは「ギター弾きの恋」を見るとわかり、ジュネの「ロスト・チルドレン」の鎖切り芸人ワンもザンパノへのオマージュが感じられる。 イタリア的な表現は不得手な部分もあるけれど(ジェルソミーナが発症するシーンなどは、哀れっぽすぎて得意ではない)、個性的な2人の対照的なキャラクターやバイクに引かれる古びた小さな「家」は詩情あり、行く先々での大道芸の日々に祭りの光と影。 癒しの言葉を語るキ印が登場、ザンパノが彼を殺すことで均衡が破れ、ジェルソミーナの心にも綻びが生じ、ゆるやかに悲劇的な結末に向かうさまは残酷なまでに人の弱さを見せる。 【レイン】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-06-19 00:00:03) |
17.引き込まれました。ザンパノとジェルソミーナの人生とイタリアの貧しい時代の映像が印象深い。 【HRM36】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2010-03-12 22:32:48) |
16.《ネタバレ》 ザンパノは無教養で粗暴な肉体派旅芸人。自己中心主義で愛情表現は不器用だが、世渡りの手管には長けている。「生きるためには、女でも何でも、利用するだけ利用する、それのどこが悪い」という哲学の持ち主。女は力で従わせ、時には僧院での泥棒も厭わない。自分一人の力で生きてきたという自負があり、自信に満ちている。だが彼に関わった人間はみな不幸になる。まずローザの死に責任があるだろう。助手兼愛人であったはずで監督責任がある。陽気で古い友人であるキ印は殴打死させられ、交通事故死に見せかけられた。もっとも可哀そうである。ジェルソミーナは精神を病み、置き去りにされ、遂には孤独死を迎えた。本来なら実家に帰してあげるべきだったのに。彼の人生の中で、彼のことを純粋に愛してくれた人はジェルソミーナだけだっろう。失って初めてその大切さに気付く。彼女の死を知って、嘆き悲しむザンパノの姿は印象的だ。だが、ローザやキ印に対する贖罪の気持ちは持ち合わせているだろうか。もっと時間がかかりそうである。知恵遅れのジェルソミーナはザンパノから虐待に近い扱いを受けながらも、彼といることで、自分の存在意義を見出し、自我に目覚めてゆく。キ印はジェルソミーナを救いたいと願いながらも、彼女の気持ちを理解し、ザンパノの元へ彼女を帰す。ザンパノは物事を考えることが嫌いで、だた本能のおもむくままに生きてゆく。三人はお互いに相手を必要としながらも、不器用さゆえに反発しあい、悲劇を迎える。キ印はザンパノのよき理解者だったがおちゃらけが過ぎた。ジェルソミーナは心が繊細すぎた。ザンパノは粗暴すぎた。鋼のような心がジェルソミーナ無垢の心に気付き、大泣きする。初めて他人のために涙を流したであろうその姿には感動を覚える。自分一人の力で生きてきたと思っていたが、そうではないと気付いたのだ。ようやく人間らしさにめざめた彼だが、その前途は苦難に満ちているだろう。年老いて、旅芸人として生きるのは難しそうだ。どうやって生きてゆくのか。孤独な彼に何が残されているのだろうか?ジェルソミーナの思い出だけが美しい宝石のように心に刻まれているのだろうが、それは彼を苦しめることにもなる。だが後悔するのに遅すぎることはない。困難ではあるが道は続いている。彼が歩む道をあれこれと想像してしまうのは、それだけ感情移入しているからだろう。逆説的で骨太な人間賛歌の映画に拍手。 【よしのぶ】さん [DVD(字幕)] 8点(2010-03-01 23:49:21) |
15.《ネタバレ》 物凄い古い映画なのでちょっと分かりにくかったり退屈になってしまうシーンが多いのが難点ですが素直に良い映画だなと思える作品でした。期待とは違う映画でした。思い切りこちらを泣かせて来ようとする映画なのだと思いしっかり泣く準備をしていたのですが、そこまで露骨な映画ではありませんでした。非常に淡々と描いているのです。泣かせよう泣かせようとはせずに淡々と、そして静かに、丁寧にザンパノとジェルソミーナのドラマを描いています。良いか悪いかはさておき最近のこの手の映画は思い切り泣かせようとしてくるものが殆どなのでとても好印象でした。2人の表情がまた素晴らしい。ジェルソミーナは全編通して非常に表情豊かで是非前シーン注目してほしいのですがザンパノは彼女を置いていくシーン、それと彼女の死を知ったシーンから後が非常に印象に残っています。淡々と描いていく中でもしっかりと感動出来たのは役者の力もあったのでしょう。登場人物の心情を想像し音楽・表情を思い出すだけで切なくなってきます・・・。 【ケ66軍曹】さん [DVD(字幕)] 8点(2009-04-30 05:05:03) |
14.《ネタバレ》 最も印象に残るのはザンパノがジェルソミーナを1人残して去っていくシーンです。毛布を掛けてやり、幾らかのお金を握らせ、彼女が好きだったトランペットを置いて去っていく。その表情にはそれまでに見せてきた粗暴さは無く、彼女の方を振り返りながら立ち去るザンパノが印象的でした。あそこが彼の人生という道の分岐点だったんですね。それだけに海岸で号泣するラストシーンのザンパノの姿が悲しい。その時の自分の行動や判断が正しかったのか、それはその時には分からない。答は後になって道の途中で気付く時がある。そしてその道はいくら後悔しても決して引き返してその地点まで戻る事が出来ない。しかしこれから進む道は自分しだいで変えていけるはず。それが人生という道なんですね…。 【とらや】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2009-03-22 02:59:30) |