3.《ネタバレ》 先にリメイク版の’93‶失踪”を鑑賞済みでした。枝葉末節を付け加えたせいでとんだ駄作になった米国版がどんな間違いをしたのか、手に取るように分かりました。
主人公の男がなぜ薬物入りコーヒーを飲んだのか、肝のここがオリジナルはちゃんと説明できています。じゅんじゅんと尺の四分の三も使って「真相を知ること」に男が絡めとられてしまっていることを訴えているのですもん。ゆえに殺人者のわなが甘美にも感じられてしまったのだろうと、彼の気持ちを察することが容易でした。
殺人者のサイコぶりの描写も丹念です。何度女性を車に引きこむことに失敗しても諦めない粘着性。誘い言葉を発音まで修正しつつ練習を繰り返す姿はまごうかたなく異常が漲り、観てて震えます。
被害者が奴の手に落ちる再現場面も怖くて上手い。キーホルダーがここにきて伏線として活きる巧みさ。「もう少しで」運命が違う方へ流れたかもしれない可能性多々。外国人でなかったら。「瓦」の文字に怪しむことができたら。「志村後ろ後ろ」じゃないですけど、観ている者にきりきりともどかしい思いをさせるシチュエーションの連続。
映画史のバッドエンド上位に輝くであろう救いの無いエンディング。凄く恐ろしく嫌なものを観ました。嫌なんだけど、その巧さが忘れがたい映画です。