1.《ネタバレ》 中盤辺りでのカーチェイスはもちろん凄いのだけど、自分が引き込まれたのは、追い込まれたベルモンドに迫り寄るオマー・シャリフ警察の足元のみを映すカメラ。
「地下室のメロディー」同様、アンリ・ヴェルヌイユ監督は緩急の“緩”の部分を魅せることに関して右に出る者はいないのでは。
その“緩”の極みともいえるのがこの映画最大のハイライト、冒頭の強盗シークエンスでしょう。
金庫の前で淡々と仕事をこなすベルモンド扮するアザドの鮮やかな所作には安心感すら感じさせるにもかかわらず、ドキドキして見入ってしまうのは何故なんだろう。
パトカーが行ってしまったと見せかけといて戻ってきたり、立ち去ろうとした瞬間に金魚鉢の割れる音で再び屋敷に戻ってくる“一度落として上げる”テクニックは、ヴェルヌイユならお手のものといったところでしょうか。
また、この映画のテーマ曲を口笛で吹きながら登場させるユーモラスな演出も大好きです。
おもちゃ倉庫や埠頭での再三にわたる警察との駆け引きも見ごたえがありますし、ベルモンドの体を張ったアクションも必見ですが、ラストが玉にキズ。
犯罪は成功せず、警察も殺さずで、道義的には悪くはない結末ですが、鶏のアップで締めくくるラストショットはちょっとビミョーかと。
しかし、前半の見ごたえのある映像はやはりインパクト大ですし、レストランのシーンではギリシャ料理の説明がさりげなくなされていたり、アテネの観光名所のアナウンスなども挿入されていたりと、異国情緒溢れる雰囲気も感じられ楽しく観ることができたと思います。