2.ウディ・アレンが大好きなので、コール・ポーターのナンバーは自然と覚えてしまった。とはいっても元来がロックファンのため、それ以上の興味はあまりなく、ただ単にエルヴィス・コステロ先生目当てに見に行ったのだが、予想以上にいい出来だったと思う。死に行くポーターに、彼の半生の舞台を見せるという設定、最初は劇中の出来事(過去の語り)とそれを見て感想を述べる晩年のポーター(現在の語り)が交錯しすぎて、語りがスムーズでない印象を持ったが、見ているうちにそれも気にならなくなるほどぐいぐいと引き込まれていった。歌というものが持つ圧倒的な力、というのを改めて感じる。映画より、小説より、音楽は何よりミニマルな表現であるけれども、だからこそ多くの人の心を打つ。だからケヴィン・クラインがアシュレイ・ジャッドのためだけに歌った「So in love」が実に胸に迫ってくる。 そういう意味では、やはりこの映画の最大の勝因はコール・ポーターの原曲が本当に素晴らしいということに尽きるだろう。