3.《ネタバレ》 フィンランドの風土、たたずまいからインテリアの細部に至るまで本当にオシャレで、それだけでも笑顔になる作品です。72分という尺なので中だるみも感じられず、一昔前の海外のホームドラマのような雰囲気を醸し出していますが、そこには家族・姉妹愛・近所の人との絆も描かれており、とても素敵な作品になっています。少し前の日本が抱えていた、当たり前に共に暮らしている中での家族のすれ違いのドラマですが、今の日本は更に個々人が精神的にも孤立しているので、この世界が羨ましくも感じます。研究に没頭し家をかえりみないお父さん、家事が出来ないお母さん、誰かにかまって貰えないと常に不満な妹キルトシューの三人と、その三人を支える幼き大黒柱の姉ヘイフラワーの葛藤。ヘイフラワーの視点から描かれていて、彼女の無垢の頑張りと、自分の些細な願いが受け容れられなかった事に対する不満の爆発全てが愛しく感じます。最後は少々強引なハッピーエンドですが、今の日本の家族に一番欠けているものを見せつけられたような気がしました。でもパパもママもあと30分早く「レースのあのズルはいけないよね、本当はお姉ちゃんが1番だったよね」と認めてあげればあんな大事にはならなかったのに!とかすっかり世界に没頭してしまいました。発酵したカラフルなパン生地が、鉄砲魚のようにピューピュー飛ぶシーンは痛快で笑ってしまいました。