1.ドキュメンタリー出身のダルデンヌ兄弟の映画はどの映画もドキュメンタリー的視点で主人公と主人公の生活が生々しく描写される。この作品では不法滞在する外国人労働者に住居を斡旋しその賃料を飯の種とする親子が登場する。この親子を演じたオリヴィエ・グルメとジェレミー・レニエは些細な仕草によって目に見えない親子の絆までも画面に残し、二人は以前からずっとこの仕事をしてきたかのように自然に且つ手際よく、それこそ演技の枠を超えて役に染まっている。しかしこの映画が素晴らしいのはその完璧なまでのリアルな描写に留まらず、その上に「少年が成長(自立)する」きっかけと過程というドラマチックなものを違和感なく溶け込ませている点。「約束」という情的なものを支点として「父親に従う子供」という図式が徐々に崩れてゆく展開が実に映画的で良い。さらに「現実」に追われる親子の生活ゆえに少年が惹かれるきっかけともなった黒人家族の悪魔祓いや占いといった非現実的な儀式が親子の生活との対比として描写されるあたりもまた実に映画的である。