1.《ネタバレ》 社会の崖っぷちに生きる若者らの滑稽さ、危うさ、儚さが見事に描かれている。そして絶賛すべきは、なべおさみ。キレのある動き、明快な台詞廻し、涙を誘う哀愁の背中。こんな魅力的な役者だったのかと再確認させられる渾身の名芝居。また本作には、後年の『男はつらいよ』を想起させるシーンも多い。 例えば、花子という名のヒロインは「奮闘篇」、長崎のカトリック信徒は「寅次郎恋愛塾」、ミヤコ蝶々と母親の逸話が絡むのは第二作「続・男は~」と設定が酷似する。だが「寅さん」より本作の方がシビアで悲哀は深い。さらに山本直純の音楽や、小沢昭一の活弁も味わい深く、物語を情感タップリに彩っている。とにかく喜劇史の金字塔たる一本と云い切って良い。