2.《ネタバレ》 くらーい作品である。画面も暗けりゃ、ストーリーも暗い。そして何と言っても一番暗いのがデイモン君。詩人志望というところからしてもう救いようがない。実は私も好きなんですが。その彼が何となーく言われるままにスカル&ボーンズに入社し、デキ婚し、OSSに入局して、CIAが創設されて云々、という話。しかしこの場合、優柔不断というより、ある種の虚無主義なのであろう。愛国心とか、ヒロイズムといった感情は皆無に見える。出世欲や金銭欲でもない。6歳にして父親の遺書を隠した時から、秘密と欺瞞に人生を捧げることが決まっていた、というのはル・カレの「パーフェクト・スパイ」的な解釈。スマイリーをもう少し邪悪にすると、ああいうキャラになるかな?あるいは家族や人間の絆を組織に求めたのか?「ゴッド・ファーザー」のスパイ版にして、「スパイ・ゲーム」の昔版。現代版は「シリアナ」あたりか。しかしジュニアみたいな甘ったれた若者をスカウトしてたら、そりゃアルカイダには対抗できんよね。ロバート・ベアさんが怒るのも当然です。マヌケな失態の数々も、重厚な演出のせいで笑うに笑えず、ひたすら恐ろしく、気が滅入る。確かに「ミュンヘン」のライターだけのことはある。エリック・ロスは「クイーン」「ラスト・キング・オブ・スコットランド」の英国人脚本家と何となく存在がダブるのだが、いずれにしても素晴らしい才能だ。キャストもえらい豪華である。ジョリ子にあんな風に迫られたら瞬殺だろうな。