4.本当の意味で“強い繋がり”がある人間関係というものは、時にもろくて、あやふやで、とても不安定なものだと思う。それは、そもそも人間自体の完成度が不安定で然るべきものだからだ。
「純喫茶磯辺」というタイトル、主演は芸人の宮迫博之。いかにも“イロもの”的なニュアンスの強いコメディ映画だけれど、描き出される映画の空気感の根幹には、不器用な父娘同士の等身大の親子愛があった。
へらへらした子供のような駄目親父役に宮迫がハマることは容易に想像できたが、、芸人の中では随一の高い演技力に裏打ちされて、この上ない愛すべき駄目親父ぶりを発揮していた。
娘役の仲里依紗の魅力は、その“素っ気なさ”だと思う。気怠そうに歩いたり、高いびきをかいて眠ったり、自分の足の匂いをかいだり、というキャラクターのありのままの姿を、決して違和感なく表現できる女優然としない佇まいには、逆に今後かなりスゴイ女優になっていくんじゃないかという素養を感じずにはいられない。
その二人の父娘関係の間に割って入ってくる麻生久美子のキャラクターがまた秀逸で、気立ての良さの裏に隠し持った“サイテー女”ぶりを、いかんなく演じ切っている。
3人の配役の良さとそれぞれのパフォーマンスの高さが、この映画のレベルをぐいっと上げていると思う。
描かれる人間模様は、決して美しくはないのだけれど、それは人間の“そのまんま”のまっすぐな姿で、良い悪いということではなくて、なんだかほっとする。