7.あまりに救いの無い映画だが、実話を基にしたというのだから仕方ないところか。
猟奇殺人をテーマにした映画は数多くあるが、本作の見せ方は斬新で、目が離せない緊迫感があった。
一番最初のシーンからもう観る側に犯人の顔、やること一部始終を見せてしまう。犯人が捕まるのもかなり序盤であり、今までのサスペンスのような、犯人をやっと突き止めて全てが暴かれるといったものとは一線を画する。
この映画の緊迫感を持続させる要因は、やはり何と言っても殺人鬼ヨンミンの描き方だろう。
一見普通過ぎるぐらいの青年ヨンミンから、所々で垣間見られる凄まじい狂気。
ハ・ジョンウの演技力は本当に凄い。
感情が欠落しているかのように唐突で支離滅裂な会話や、表情、行動全てにおいて見られる異常性を、役が憑依しているかのごとく演じ切っている。
動機が結局深く掘り下げられず、犯人に全く感情移入出来ないので、モヤモヤが残るし、後味は最高に悪い。
だが、本来ヨンミンのような異常者の心理などは本人以外分かるはずがなく(本人ですら自分をコントロール出来ていないようにも見える)、本来猟奇殺人犯に一般人が感情移入し、理解しようとすること自体、無理があることなのではないだろうか。
本作の監督も、「犯人に幼児期の虐待などのバックボーンを背負わすことで、殺人の動機が限定され、観る側が犯人を理解したような気分になることを避けたかった」と言っている。
痛々しいシーンが多いし、後味は最低の本作。
だが物凄いエネルギーで満ちている。
物語が進むにつれて変化していく主人公、役に立たない警察、被害者・・見所が沢山あるし展開のさせ方も絶妙。
決して万人に勧められるものではないが、見応えは充分。
韓国のバイオレンス映画では「オールド・ボーイ」に次ぐ作品だと思う。