4.《ネタバレ》 井筒監督のケンカシーンのお約束として報復(やったやつは必ずやられる)
がありますが、その先に誰かが死んでしまいとてつもない後悔が生まれてしまうという展開だったのが、
初期井筒作品の「ガキ帝国」のラストシーンでした。
本作はそのガキ帝国の続きを観る作品。
人を殺してしまった「勇気(ジャルジャル・後藤淳平)」と
友を見殺しにしてしまった「ユウキ(ジャルジャル・福徳秀介)」の
葛藤を描いた作品です。
まず本作のとにかくストイックな描写はそんな中盤の殺人シーンを
事細かに・・・
まるで私達がその場に居合わせたかのような臨場感で描ききってみせるトコロにあります。
リンチされゆく3人。
殴られる・・・死なない。
ゴルフパットで殴られる・・・まだ死なない。
バットで殴られる・・・まだ息してる。
直視する事が出来ないシーンの連続。
しかし・・・本当の不幸はここから。
今度は殺した者達の葛藤。
報復への怯え、仲間への不信感、将来への絶望感。
描かれる圧倒的な不幸。
そこでもがく勇気・・・。
恋人とつかめるはずだった幸せ。
でも彼の犯した罪はあまりにも重い。
ラストのアパートの廊下での勇気の姿に心打たれないはずがありません。
言い方は失礼ですがとても井筒作品とは思えない
何か格調高い映画を観たような気分にさえなってしまいます。
井筒バイオレンスの臨界点・・・
それは暴力という行為のその先にあるとてつもない不幸。
それを描ききった本作は近年の日本映画には決して類を見ない
反暴力映画だといっても過言ではないと思います。
個人的には誇張でも何でもなく
「パッチギ」と並肩するもう一つの井筒監督の代表作になると思います。