9.《ネタバレ》 脳死移植を題材にした医療ドラマ。こじんまりとした作品ながら傑作。
好青年の死、脳死移植=殺人罪、扱っているテーマは実は重い。
ですが映画自体は重くなりすぎない絶妙なバランス。当麻医師(堤真一)のちょっと天然で、恋愛に関しては朴念仁というキャラが良い意味で明るい味付けをしています。コメディテイストな演出を加えることで、とてもメリハリの効いたストーリ構成になっています。オペ中の曲を多数決で決めるシーンやお見合いのシーンのようにさりげないひとコマが実に良い。『ロックなんてとんでもない。メスが暴れてしまうよ。』は名台詞です。
その一方で、オペシーンの緊張感が凄い。また、序盤での野本医師のひどいオペがコントラストとして効いているため、当麻医師のオペには緊迫感とともにある種の高揚感が感じられます。これは医療界のヒーロードラマです。
その対比として分かりやすいのがオペ中の出血量。生々しいビジュアルが多いので、そーゆーのが苦手な人は注意が必要かもしれません。
命を救われた市長は町のために残りの人生全力を尽くすと近い、悪徳医師はきっちり罰を受ける。
語り手の看護師の息子が医者となり、当麻先生の病院に赴任してくるラスト。幸せな余韻が残ります。
押さえるべきところをきっちり押さえる、見方によってはステレオタイプなドラマと言えるかもしれません。
ただ私は古い人間ですから、このお手本のような、しっかり知に足のついたドラマのほうが素直に感動できるし、面白いと思えるのです。