1.ミュージシャンのドキュメンタリー映画は少なくない。 コンサートに行けなくてもライヴに接することができる等の利点があり、07年のポリスの限定的なリユニオンを機に出されたこの作品もその1本だけれども、メンバー自身が自分たちの成長を撮った記録というのは他に例がないのではないかと思う。 ドラマーでありポリスのファウンダーでもある唯一のアメリカ人、スチュアート・コープランドがスーパー8で撮り続けた映像は経年劣化もあり粗いが、当時を直に伝えるフッテージの数々はファンには感慨深いものがある。 意外なほどステージが少ないのは「シンクロニシティ・コンサート」等の優れたライヴソフトが既にあるからだろうし、ツアーの移動やスタジオ・レコーディング時にひろった彼らの映像が中心。 初期ではバンやバスでの移動だったのが専用機に変わっていくのはそのまま彼らの急成長ぶりをあらわしつつ、バンドが大きくなるのはいい事ばかりではなく分散を招く要因にもなるのをも感じさせるが、一回り年長の小柄なギタリスト、アンディ・サマーズの大人の茶目っ気が多くのバンドが陥りやすい悲壮感からポリスを遠ざけていたのもまた事実であろう。 撮影者であるスチュアート自身の映像は少なくライヴの際にはマネージャーである兄のマイルスが撮っていると思われ、一番の悪たれはスティング。 罪もないアンディに襲いかかったりファンの女の子を抱きすくめたりと、カメラの前でもストレス発散をいとわない。 移動列車内で彼の横に同じプロデューサーを使っていたXTCのアンディ・パートリッジが座っていたりするのも意表を突かれるし、PV撮影現場では両方の素材をシンクロして多元的に見せたりとスチュアートが監督としての腕をふるう。 ロックバンドという呼び方が不似合いなほど個性的だった彼らの曲をコラージュした軽快で小気味よい時間は70分余と短いが、時を経て思いがけずポリスを内側から見る機会を与えられた。