2.原題の”Triage”とは『選別』を意味するフランス語で、戦争や大災害が発生した場合にどの負傷者を優先的に治療するのか、どの患者を救急搬送するのかといった優先順位を決めることを指します。序盤の舞台であるクルドの戦場では、まさにこのTriageが克明に描かれます。医師が命の選別を行い、ある命を救うために別の命を切り捨てるという非情な現実。ヨーロッパ映画である本作には『プライベート・ライアン』や『ブラックホーク・ダウン』のようなインパクトある見せ場はありませんが、”Triage”というテーマを見つけてきたことで戦場の恐るべき一側面を描き出すことに成功しています。重傷を負った主人公が生かされるか殺されるかの瀬戸際に立たされるなどサスペンス要素も巧みに盛り込まれており、この監督さんの手腕には感心させられました。。。
主人公が命からがら帰国して以降は映画が中弛みするのですが、精神科医であるクリストファー・リーが登場すると突如として面白くなります。彼の含蓄ある発言は非常に興味深いし、クリストファー・リーの奥行ある演技からも目が離せなくなります。そして終盤に待っている大仕掛け。脚本に仕込まれたこのひと捻りが非常に効果的で、テーマを浮き立たせることに成功しています。日本では劇場公開されず、レンタル屋でも目立たない場所に置かれている本作ですが、見逃すには惜しい良作です。