1.一種の大規模国策映画だが、それを超えた見応えのある作品。ショスタコーヴィチの交響曲第七番「レニングラード」がやはり感動的な楽曲であるのと同じだ。氷結したチュード湖上での大会戦のシーンは語り尽くされた感があるものの、両軍激突までの緊迫感の描写は何度見てもすごい。悪役ながら白衣のドイツ騎士団が突撃を始めるシーンなど実に美しい。映画の前半ではドイツ騎士団が、占領したプスコフで住民を殺戮するエピソードが強烈な印象を与える。プロコフィエフの重厚な音楽をバックに展開されるが、昔の映画なので首が飛んだり血が噴き出したりといった描写はないが、中世北欧の陰惨な雰囲気がリアルに描かれている。アメリカ製の歴史映画ではこういう感じは出せないだろう。それと関連して俳優達の風貌が主役をはじめとして実に良い。北欧、東欧、旧ソ連圏の映画にはこういった地方色を備えた役者達を見る楽しみもある。アレキサンドル役のチェルカーソフは先日他界したグレゴリー・ペックとちょっと似ているようにおもわれるのだが・・・・。「戦艦ポチョムキン」のような作品はちょいと??だし、「アレキサンドル」の方では農民たちも雄々しく防衛戦争に加わったといった史実歪曲があるが、ま、そこはソ連映画のご愛敬。これはセルゲイ・エイゼンシュタインの才能がかなり幸福に開花した好例ではなかろうか。