1.個人的には、1950・60年代の「前衛的」かつ「純文学的」なトンガッていたアラン・レネよりも、この映画や、『メロ』なんかの通俗的なまでに分かりやすく、素直に物語や題材と戯れるかのようなレネの方が何倍も大好きだし、作品も素晴らしいと思います。シャンソンに合わせて口パクで歌い、他愛なくも微笑ましいパリジェンヌ(とパリジャン)たちのスッタモンダを描く、ただそれだけの映画なのに、ここにはホンモノの幸福な「気配」があって、見る者をほんわかと包み込んでくれる。一体、アラン・レネの映画でまったりニッコリできるなんて、誰が想像できた? …さてはこの巨匠、”脳軟化症”でボケたかとささやく向きもあるでしょうが、だったら、ボケとはひとつの”恩寵”でもあるんだな、とぼくは申しましょう。