1.《ネタバレ》 原作未読。少年が主人公のSFということで「どうせ宇宙のハリー・ポッターだろう」と勘違いして映画館へは行かなかったのですが、後にブルーレイで鑑賞して、これは大スクリーンで見とけばよかったと激しく後悔した力作でした。。。
登場人物の大半は少年少女なのですが、子供らしい天真爛漫さを持つ者は皆無であり、それどころか、主人公が関わるのは陰湿なイジメをやってくる嫌な連中ばかり。当の主人公にしても、優秀なのはわかるが可愛げゼロで世渡りが異常にヘタクソ、通常の娯楽作に登場する子供達とはかなり趣が異なります(本作の登場人物達は『新世紀エヴァンゲリオン』に相当な影響を与えたとか)。そんな子供達が『フルメタル・ジャケット』ばりの厳しい訓練に挑む様には、かなり異様なものがありました。異様と言えば大人代表であるグラッフ大佐も同じくで、主人公の才能を見抜き、軍人としての育ての親となる一方で、後に人間のクズのような男であったことが判明するキャラクターであり、こちらも一筋縄ではいきません。この役に父性の塊のようなハリソン・フォードをキャスティングすることで、善悪という価値基準の脆さが実にうまく表現できている点には感心しました。。。
本作には含蓄あるセリフが多いのですが、中でも私が心を打たれたのは、イジメっこをボコボコに殴り、蹴り倒した理由を聞かれた主人公の回答で、「もし圧勝であれば程々のところで手を引いたが、あの場合はギリギリの勝利だったため、二度と攻撃する気を起こさせないよう、徹底的に相手を痛めつけた」と言うのです。これこそが多くの自衛戦争の真相だし、21世紀のアメリカが手を染め、泥沼に嵌った対テロ戦争のホンネです。1億ドルバジェットの娯楽作を装いながらも、こういう深いテーマをズバっと突いてくる本作の姿勢には感銘を受けました。。。
残念だったのは、主人公の背景の描写が不足していたこと。原作によると、舞台となる世界では人口抑制政策がとられており、3人以上の子供を持つことは禁止されているのですが、主人公の家庭については長男が天才児だったことから3人目までの出産が特別に許可されており、その結果生まれたのがエンダーだったとか。エンダーが周囲から厳しい視線を受けることや、彼が常に思い悩んだ顔をしているのはこの背景に起因するものなのですが、映画版ではその説明がないために、ドラマの通りがやや悪くなっています。