2.《ネタバレ》 原作が舞台劇ということもあってか基本的にオクラホマの一つの家が唯一の舞台となります。ハッキリ言って話自体はとても地味だと思います。父親の葬儀をきっかけに実家に帰ってきた娘たちと、叔母、そして薬物依存症の母親が延々と口げんかを繰り広げる、ただそれだけですので。
但し、描かれている内容が普遍的なのでその物語がズシンと心に響きました。分かった風に言ってしまうと“ふつうの家族でいることの大変さ”を描いた作品だと思うのです。誰でも家族は仲が良い方が良い。しかし家族の関係の全てが順風満帆に進んでいる人間が一体どれほどいるでしょうか?不仲、両親の浮気・離婚、相続問題、将来の親の面倒、etc……。家族のトラブルは挙げればキリがありません。本作もそういう結構普段考えるのは面倒な家族の問題を扱っていて、ある程度恵まれた家族関係を保っていると自分では思っているとは言え、かなり物語にのめり込んでしまいました。結局、家族の関係ってのは紐で繋がっていて手繰り寄せれば直ぐに相手に届く様な簡単なものではなく、ゴム紐で繋がっているような物だと思うのです。家族を理解しようと、愛そうと努めても、逆に相手から攻撃を喰らったり、離れていったり、反発したりしてしまう。この映画の登場人物はそんな風に延々と衝突して自壊していく。普通の映画ならば最後に家族が元通りになりました、若しくは元通りになりそうです、と希望を持たせて終わると思いますが、本作は「家族はそんな簡単に直るもんじゃない」と言わんばかりに崩壊したまま終わりを迎えるのも個人的に現実的で良いなと思いました。そんで延々とネイティヴ・アメリカンのお手伝いさんを邪険に扱っていた母親が、家族が一人として居なくなった途端に彼女に縋るのも中々感慨深いですね。たった一人になったときしか家族のありがたみは判らないものなのでしょう。良くある話ですが失って初めて失ったものの大きさに気付く。
あとは豪華キャストによる演技合戦が何より魅力的ですね。メリル・ストリープとジュリア・ロバーツは売れっ子になってからお綺麗な役が多かった故に、年老いた姿で母娘を演じたガッツは称賛に値します。普段、イケメン役が多いベネディクト・カンバーバッチが情けない中年男を演じてるのも新鮮味があってちょっとツボでした。色んな大俳優のちょっと違った演技の幅が観れる作品でもあると思います。