1.《ネタバレ》 ジャウマ・コレット・セラとリーアム・ニーソンのコンビはこれで三度目ですが、作品のクォリティはどんどん上がっています。本作は、外形的にはB級アクションに分類される作品ですが、その中身は非常に濃厚。ドラマ性と娯楽性を両立させた見事な佳作に仕上がっており、当該ジャンルの作品としてはここ数年で最高の仕上がりだと思います
リーアム・ニーソンのみならず、エド・ハリス、ヴィンセント・ドノフリオ、ニック・ノルティと、渋すぎる演技派をズラリと並べたキャスティングには、「B級アクションにこれだけのメンツが必要なのか?」と思ったものの、実際に作品を見てみると、このキャスティングこそが作品のキモでした。長々とした説明セリフを費やさなくとも、彼らの演技や雰囲気を短時間見るだけで、キャラクター達の背景や複雑な感情がきちんと伝わってくるのです。それにより、アクションの勢いを殺さないまま重厚なドラマを描き切れており、作品の絶妙なサジ加減が実現されています。良い演技とはこういうことを言うのだなぁと納得させられました。
偶然が重なって子供同士が殺し合いをしてしまい、その事態の収集を巡って、本来は親友同士である親二人が敵対関係となってしまう。状況からして一方的に悪いのは組長の息子の方であり、このトラブル全体が組長の逆ギレのようにも思えるのですが、その辺りの設定上の不備はエド・ハリスの好演によりしっかりと補完されており、ドラマを破綻させるには至っていません。受けて立つニーソンは、若い頃の狂犬ぶりから家族も友人もみな離れて行ってしまい、組の貢献者でありながら組織内での敬意も得られないアル中老人。しかし、息子に危険が迫っているとなれば黙っておられず、持てる殺人スキルを全開にして逃走経路を作るという、最高に燃える役柄となっています。アクション俳優としてのニーソンのパブリックイメージもキャラクター造形に寄与しており、この親父がとにかくカッコいいのです。ごはん3杯くらいいけそうなほどカッコいいです。また、過去の悪行が原因で息子からいろいろとなじられるのですが、何を言われようが「お前のためだ」と言って愚直に行動し続ける様には感動的なものがありました。現在、こんな哀愁ある殺人マシーンを演じられるのはニーソンかスタローンくらいでしょう。