1.公開時にはまるでカーチェイスを売りにした作品のような紹介のされ方をしていたような記憶があるのですが、まあ確かにフレンチ・コネクションにかこつける(か、さもなくばエクソシストにかこつけるか)しか、配給元としては仕方がなかったのかな、と。なにせ、何ともクセのある、暗いオハナシ。ラストなんてまるで、松本清張作品のような、やりきれなさが残ります。だもんで、分かりやすい宣伝としては、カーチェイス凄いです、ってことになるのでしょうが、クラッシュシーンを連発する荒唐無稽なものではなく、基調はあくまで、リアリズム。主人公の車が反対車線を突っ走る場面が見所ですが、その車線には、撮影のために大量の自動車が配置されていて、そこをフレンチ・コネクションさながらに車載カメラが突っ切っていく。リアルさと誇張とがうまく噛み合って迫真のチェイスシーンになっているのは、丹念な撮影の賜物でしょう。さて物語はというと、これもフレンチ・コネクションみたいにハミ出し刑事が主人公(同じくカーアクションを備えるとともに、「2」みたいに走って追跡する場面もある)、しかしこちらは、橋からバンジージャンプするシーンにも象徴されるように、いささか無謀にハミ出し過ぎる刑事のオハナシで、事態がどんどん取り返しのつかない方向へ行ってしまう(なので観ててスカッとするような刑事アクション路線という訳にはいかず、暗い方向に)。さすがにこの主人公、「狂気」を感じさせるところまではいかないのが、作品としてよかったのかどうか、というところですが、あくまで一本気に突っ走る姿は、やはり印象的で、熱演といってよいでしょう。主人公とその相棒が話す場面はしばしば、切り返しをあまり用いず、一連の動作からの流れとともにワンカットで描写されたりしますが、そういったところがいかにも、行動のヒト、という感じ。