1.一枚の写真は1000の言葉に勝る。まさにそれを見せつけてくれた作品だった。
まずジョニーデップをたたえたい。水俣訴訟問題を学生の身から社会人になるまで支えてきた夫から見ても
握手したあの時のユージンスミスとジョニーはまさに瓜二つだったそうだ。
決してコマーシャリズムに陥るような内容ではない。日本の愛国心を踏みにじり地に落とす作品でもない。
貧しい漁民が、魚を食べて生きるしかない漁民が、命としていた海にチッソ化学工業が15年にわたり(それ以前に被害者は続々出て猫狂い病と噂になっていた)どんな抗議を受けても、猫400号実験を経て水銀排水による汚染を確認しても、結果を闇に隠したうえでの悪行である。
ユージンの撮った作品はどれも素晴らしいが、それが「LIFE」に載ったことが事件の幕引きになったわけではない。
大企業チッソには闇の権力がべっとり貼りついており、あくまで水俣病を「奇病」と言い張り、猫400号実験の結果を社会から隠ぺいした。地元も「水力発電で電気を通してくれたチッソ様には頭が上がらない」状態だった。
そんな絶望的な状況の中に、酔いどれて体も心もボロボロになっていたユージンが現れ、大企業に隠ぺいされた真実の過去を知り、
たとえ腕を砕かれようと片目を潰されようと、アメリカの「ライフ」誌に、歴史に残る傑作を送る。
ストーリーについては枝葉を落としてわかりやすく作られたきらいはあるものの、写真というもののちからを、うつくしさを、思い知らされた一作だった。
そしてもう一度言う。ジョニーはすばらしい役者だと。