1.《ネタバレ》 彼女の名は、ティンヤ。北欧フィンランドで裕福な家庭に暮らす何処にでもいるような12歳の女の子だ。ネットで幸せな毎日を全世界に発信することを趣味とするお母さんと、そんな母親に若干疲れ気味のお父さん、生意気盛りの弟と普通に生活している。そんな彼女が今、最も取り組んでいるのは、新体操。近々開催される全国大会に向け日夜練習に励んでいた。母親もまるで我が事のように応援してくれている。だが、なかなか思うような結果が残せない。そんなある日、ティンヤは夜の森で小さな鳥の卵を拾うのだった。瀕死の重傷を負った母鳥は近くで死にかけている。このままではこの卵もここで朽ち果ててしまうだろう。ティンヤは思わずその卵を持ち帰り、部屋のベッドで温め始めるのだった。すると不思議なことに2日3日と経つうちに卵は徐々に大きくなってゆく。まるで妊婦のお腹のように大きくなった卵は、とうとう〝その時〟を迎えてしまう――。思春期を迎えたばかりの少女が孵化させた、そんな恐るべき存在の恐怖を描いたモダンホラー。この全編に漂う、なんともいや~~~な感じが最高に良いですねぇ、これ。冒頭、自分たち家族がいかに幸せで愛と希望に満ち溢れているかを動画にしてネットにアップしまくる母親のウザい感じが最高にグッド。母親のそんな圧から逃れるかのように、少女が密かに温め始めた卵とやがて産まれてくる〝娘〟。こいつが焼き鳥屋さんに並んでそうな部位ばかりで出来た焼き鳥少女で超絶気持ち悪い!餌を柔らかくするために主人公が自らいちいち呑み込んで吐き出してから与えるのも、そりゃ鳥の習性やからしゃあないとは言え、そこまでリアルにせんでもえーやん(笑)。でも、主人公と一緒にお風呂に入るシーンくらいからちょっと可愛く見えてくるから不思議。この絶妙にキモ可愛いセンスは、例えるならお上品な楳図かずおって感じですかね。主人公の隠していた願望を叶えるためにこの娘が暴走するのもいちいち神経を逆なでする嫌なものばかりで凄く良かったです。きっと彼女の母親は若い頃足のケガでアイススケートを諦めてしまい、その夢を娘に託そうとしているのだろう。そんな母親の身勝手さやどんどん変わってゆく友達との関係に次第に心に鬱屈したものを抱えてゆく少女。初めて知った自らの嫉妬や憎悪といった醜い感情を鳥人間という存在に無意識に託している。なかなか深い。この怪物が実は妄想の産物でホントは彼女の自作自演なのではと思わせてからのオチのつけ方は見事というしかない。最後、この醜い娘とともにこれからも彼らは「幸せな家族」を演じて生きていくのだろう。純粋無垢だった少女は、こうして大人へと生まれ変わってゆくのだ。監督はこれがデビュー作らしいが、この先要注目の才能だ!8点!