1.何処にでもいそうな家族・親族のドラマが、地域開発、介護問題、障害児問題等々を織り交ぜながら淡々と描かれる様は小津安二郎を連想する。
本作は、そのドラマを軸としながら、舞台となる富春江の情景を描くことに主眼が置かれる。
富春江と言うのは、長江の下流地域、三国志の呉の本拠地でもあり、古代から中世にかけてその風光明媚さを幾多の著名な詩人や画家がその作品で賞賛したそうな。
本作においても、湾の入り組む美しい自然情景と、都市開発が進み大きく変わっていく様子が、様々な手法で描き出されます。
有る家族のエピソードからだんだんカメラが遠ざかって富春江の光景を映し出し、そのまま違う所に居る他の家族に再びクローズアップしてそのエピソードに切り替わる・・といった感じの手法が頻出。
デート中の孫娘が恋人から「父親に会ってほしい」と言われ、河畔を2人で歩き、途中で徒歩と遊泳の競争をしたりしながら、河口付近、父親の働く遊覧船に行き着き、船が出てそのまま湾の美しい風景に移っていく・・というシーンは10数分遠景のワンカット。(監督は山水画の絵巻物を映画で表現したかったそうな。)
クラッシックな古き良き映画の中に、素人目にも「あ、面白いな」と思える手法が随所に使われ、斬新でとても気持ちが良いです。
音楽も現代プログレ~ポストロック系の電子音楽が、ゆったりとした画面に絶妙にマッチして良。
今どきの中国映画なんて検閲塗れのイメージであまり見る気になれなかったけど、本作ポスターのあまりの美しさ、感じの良さについフラフラと見てしまいましたが、
うん、良い映画でした。さすが中国は地力あるなぁという感じ。
日本もこういう映画をたまには創ってほしいものだけど、在日塗れの今の業界の状況では無理かな・・。