11.《ネタバレ》 ドナルド・ハミルトンの小説を原作とする人間ドラマに富んだ西部劇。
ジェローム・モロスのテーマ曲に合わせて広大な大地を駆け抜ける馬車の疾走感。
後の「ベン・ハー」で見せた躍動感が、この映画には詰まっている。
チャールトン・ヘストンとグレゴリー・ペックの共演、バール・アイヴスの演技が光る。
「ビッグマディ」の水源地を巡って対立するテリル家とヘネシー家。
ヘンリー・ハサウェイ「丘の一本松」を彷彿とさせる構造だ。個人的には「丘の一本松」の方が凄い作品だと思うし、ワイラーにしても「友情ある説得」や「砂漠の生霊」の方が好きだ。
しかし本作最大の見所はやはり「水の乏しい西部においていかに水が貴重であるか」というテーマだ。
ジョセフ・H・ルイスの「テキサスの死闘」が石油を巡る対立を描いたように、本作は水を中心に対立を深めていく。人間を撃つよりも、貴重な水を保存する貯水タンクに穴を開けられる方が大打撃だ。一滴の水が村人数百人の命を左右する重み。
セシル・B・デミルの「大平原」は、その水圧で列車を破壊する「爆弾」代わりに使われてしまう。
東部出身のジム・マッケイは博愛主義の塊という感じでイライラする。俺は善良一本筋のペックが嫌いだ(大根だし(ry)。
「白昼の決闘」みたいに無理に悪ぶってみせるペックや、「ローマの休日」のように徐々に本音を打ち明けるペックの方が演技者としても深みがあるし大好きだ。「レッド・ムーン」の老将ガンマンや「アラバマ物語」の父親役も素晴らしいが、ジョン・ フランケンハイマーの「I Walk the Line」みたいなペックは滅多に見られない。
が、本作の諦めない根性や覚悟のある男気は認めざる負えない。
二人のヒロインの存在と演技もグッド。
キャロル・ベイカーの髪を結んだ時の色っぽさ、
ジーン・シモンズの服を着ていても解る腰元のエロさとふくよかな胸ゲフンッゲフッ
恋人の居ない間に人妻に接吻するような男かと思ったヘストンも、いざ戦いとなれば恩人のために共に死を覚悟する戦士としての表情を見せてくれる。危険と解って岩場に歩み寄る男たちの何と頼もしき事。ロングショットで撮られたヘストンとペックの殴り合い、ラストの決闘も中々。
アクションとして見るにはやや不足だが、西部劇の人間ドラマと馬車のスピード感を堪能できる1作。