4.もの凄い洒落が効いているブラックユーモア。
「テーブルマナー」=現代文明の中における不要なもののメタファーとして描かれている点もユニークだ。
ネズミに不要な「テーブルマナー」を教え、安全な社会を作ろうとする博士ネイサン。
全てが外見で判断される容姿第一主義であるこの世界には生きれない毛むくじゃら女ライラ。
誰一人この世界では本能のまま生きることはできないし、本能を隠すことがこの世界に生きている証である中で一人本能のまま生きる野生児パフ、と素材は面白いし。
パフは銃でネイサンを殺し、ライラに罪をかぶせ、人々に嘘を付くというような「人間の身勝手さ」だけを学び取り、文明に毒されればもはやネズミですら元の姿には戻れないというラストも唸らされる。
しかし、ラストのネタに至るまでの話が正直上手くまとまっていないと感じられる。
ネイサンが「自分も類人猿になりたい」と本当の気持ちで叫ばせる必要があると思うし、そのためにはそれまでの過程をしっかりと描く必要がある。
ライラも上手く機能していない感じはする。
そしてパフによって「自然回帰」の大演説が打たれて、群集が本当にそのような気持ちにならないと、ラストが上手く活きてこないような気がする。
どこか論理が一つ飛んだか、少し結論を急ぎすぎたような気がするな。
もっとも「自然回帰」までも皮肉るつもりはなかったので、そこまでしっかりと描かなかったのかなという気もするが。
ともかく、お仕置きをしてまでオペラ鑑賞法やテーブルマナーを教育する姿には現代の本末転倒さを感じさせる。また、ストレートに「人間社会」と「文明」を皮肉った面白さは評価したい。