5.《ネタバレ》 少人数のスタッフで瀬戸内の離島でロケを敢行。500万円程の低予算で撮影された。全編通して会話がなく、わずかな音響が入るだけの新藤兼人監督の異色作。ストーリーも単純で、前半は舟で島に向かい水を汲んでは坂を登り畑に水をやる。それを淡々と繰り返すだけなのだが全く飽きません。櫂で水をかく音、砂道を踏みしめる音。土に水が染み込んでいく音。普段、気にも留めない音がこんなにも美しかったのかと驚きました。後半、2人の子供のうち1人を病気で失います。クライマックスで乙羽信子演じるトヨの気が狂ってしまいます。水桶を投げ捨て大事に育てた野菜を引っこ抜いた後、静寂を切り裂くように泣き叫びます。(この作品での乙羽信子の唯一の肉声)ただ、すぐに我に返り生活のために畑仕事に取り掛かるのです。人生の厳しさ、残酷さを見せつけた名作。 【スノーモンキー】さん [DVD(邦画)] 8点(2017-03-18 01:45:27) |
4.2013.06/03 3回目?鑑賞。遥か昔の記憶、裸の島の俯瞰と切ない音楽のリフレーンが・・。 人間のより良く生きてゆく本能が延々と繰り返されて今日がある。丁度私の年齢が多感な年頃だったこともあり、暮らしはまだはるかに良かったので、こんな生活もと衝撃を受けた記憶が生々しい。またセリフなし、林光のテーマ曲、島の俯瞰等は秀逸。でも切なくて堪らなかった。 【ご自由さん】さん [CS・衛星(邦画)] 8点(2013-06-06 11:26:05) |
3.《ネタバレ》 この映画には台詞らしい台詞がほとんど無い。笑い声や掛け声、子供達の歌声などはあるけれど、会話という会話が無いのである。そして、そんな会話を一切省くことで省略することによって、新藤兼人監督は互いが相手のことを全て受け入れてこそ伝わる人間としての正しい姿、人間が人間であること、人としての有り方、それを認めているからこそ、そんな関係のある者の間には言葉など要らない。言葉など無くても伝わるのである。言葉というものはお互いを確かめ合う上において時には不要であると言っているようである。そうなのだ!信頼しあっている者同士の間には言葉は要らない。相手を受け入れ、相手の気持ちを知る。また自分の気持ちも相手に伝える。人と人との関係、繋がり、この映画が意味するものは何なのか?全く知らない別の世界で生きている者同士なら言葉が無ければ解らないだろうが、この映画の人達の間には相手をよく理解している者同士、同じ島に住む者同士であるから言葉は無くても良いのである。人と人との繋がり、そして、人間って凄い。生きること、生きていることの凄さを映像だけで見せてしまうこの新藤兼人監督という人の凄さ、今の日本映画には無い。欠けている要素、何でも台詞でやってしまう今の日本映画とは正反対な作品である。 【青観】さん [DVD(邦画)] 8点(2009-08-19 22:52:53) (良:1票) |
2.何もない島で、一つの家族が生きている。毎日毎日繰り返される重労働に弱音を吐く事もなく、誰かに頼ったり頼られたりする事もない。家族は自分に課せられた役割と仕事をもくもくとこなしていた。平凡で何気ない日々を生きていた。しかしそんな中、幼い命がいきを引き取った。母親の心は崩れ、内側の崩壊はあっという間に外側まで広がり、母親は身も心も崩れて行った。苦しく、辛い日々に積み重ねられたストレスなど積もり積もった苛立ちは、息子の死によって耐える事が出来なくなった。その狂う姿はあまりにも切なく、あまりにも痛々しかった。しかし母親の崩れる姿を優しい瞳で見守る父親の姿が横にあった。まるで「泣いてもいいんだ」と言っているようだった。励ます事も、慰める事も、一緒になって悲しむ事もせず、ただ強い気持ちでしっかりと地面の上に立っていた。そして彼等は生き続ける。日々の日課を休む事は死を意味する。悲しみに沈んでいる暇など彼等にはなかった。人間は生き続ける為に立ち止まっては行けない。どんなに苦しくても、どんなに悲しくても絶対に立ち止まってはいけない。と言う事を僕は学び、そして深く心に刻みました。 【ボビー】さん [DVD(字幕)] 8点(2005-04-09 22:50:28) (良:1票) |
1.台詞が無いことへのこだわりが実ったすばらしい作品だと思います。観終えた後の喪失感を黙々と生きる彼らの生き様がなんとも駆り立てています。だからこそ、最後、一言でもいいから、例えば泣き崩れる女房に旦那が「なあ」とか話しかけるようなことがあれば、その一言がなんと重く、感動的になったことだろうかと思う。浮き彫りになっただろう。あと、乙羽信子さんが僕の後輩に似ていて面白かった。 |