2.《ネタバレ》 ヨハネの黙示録の一節「七つ目の封印」に題材を得たとされる本作。
十字軍の遠征から命からがら故郷に戻ったつもりのアントニウスたちだが、あの死神は既にアントニウスたちがペストに侵されている事を暗示していたのでは無かろうか。
命を賭して戦った遠征で何も得られず、戻った故郷にも疫病が蔓延る。
最早アントニウスは死の運命から逃れられない。
死神と己の運命を賭けたチェス。
勝てば生き永らえ、負ければ死。
この映画は光と影の対比に事欠かない。
白き光の「生」と黒き闇の「死」。
死神が欲しいのは、死を受け入れた魂。
アントニウスが欲しいのは、「この世に神はいるのか」という答え。
神を信じて人を殺めてきたアントニウスは、己が正しかったのか、間違っていたのか、それを神の存在を通して答えを探し続ける・・・。
この映画の淡々とした流れも、死神がゆっくり近づく足音を表しているのでは無かろうか。
アントニスと出会う人々も、常に死と隣り合わせの者がひしめく。
「魔女」として処刑台に運ばれる女性は、まるでジャンヌ=ダルクをイメージさせる。
神を一身に信じた者が人の手によって殺されていく。
この映画に神はいないが、死神は常に問いかけてくる。
死を擬人化した死神。
黒いローブを被ったてるてる坊主のような風貌のこの死神は、死を晴らすのではなく、死を呼び込む雲の闇を呼び込むのだ。
その存在が眼に見える者は、その者の死期が迫る事を意味するのか。
死神に奪われていく命は、ペストが感染したか、自ら死を選んだか、そのいずれかであろう。
この映画の死神は鎌を振るうでも、直接手を下す事もしない(ノコギリはいそいそ使うが)。
静かに死を受け入れた者を、あの世へといざなうのみだ。
死神が運ぶ「七つの命」。
アントニウスは結局答えを得られなかったが、最後の最後で「生の光」の中を歩く3人の命を救うことが出来た。
母親と父親、そして赤子。
まるで全てを無に還す「黙示録」の後に残される第2の「アダム」と「イブ」のように、生き残った3人は再び生のあくなき道を歩み始めるのだ。