7.昨年の正月にシリーズ第一作目の「男はつらいよ」を初鑑賞して、一年ぶりに第二作目の今作を鑑賞。
来年以降も、年のはじめに“寅さん”を観ることを恒例化していこうと思っている。
自分自身が今年で40歳になる。
「不惑」という言葉の意味に対して、自分の精神年齢が程遠いことは否めないけれど、それでも人生の機微というものを何となく感じ取れるようにはなってきた。
自分の人生において何が大切で、何がそうではないのか。そういうものがおぼろげながらも見えてきた今、この国民的喜劇映画が描き出す「娯楽性」は、ことほど左様に心を満たす。
渥美清演じる「車寅次郎」というキャラクターはもちろん強烈だけれど、劇中において何か劇的なことが起こることはない。
が、しかし、なんでもないシーンで笑いを生み、なんでもないシーンでしみじみとした感動を生む。
これぞこの国の「喜劇」の真骨頂だろうと思える。
このシリーズ第二作においては、脇を固める豪華俳優陣の存在感も際立っている。
寅次郎の恩師役の東野英治郎は、個人的に幼少期に観ていた「水戸黄門」の印象が強く、あの特徴的な声の響きがとても懐かしかった。
若き山崎努は、30代前半にして既に映画俳優としての稀有な雰囲気を醸し出しており、今作ではヒロインの恋人という「普通」の役柄を演じていることが逆に印象的だった。
そして何と言っても、寅次郎の生き別れの母親役として登場するミヤコ蝶々の存在感が抜群。
数少ない登場シーンの中で、稀代の女漫才師ならではの“しゃべくり”と、この国の喜劇を牽引し続けていたのであろうコメディエンヌとしての表現力が圧倒的だったと思う。
渥美清も、東野英治郎も、ミヤコ蝶々も、既に亡くなって久しい。
けれど、彼らが昭和の時代に生み出した数々のまだ観ぬ「娯楽」を、これからまだまだ堪能できることは幸せなことだと思える。