2.《ネタバレ》 1957年の作品で、しかも特別メジャーな作品というわけでもないので、画像の状態は良いとは言えなかった。
でも最近は1950年代~60年代のモノクロ作品を見慣れてきたせいか、大して苦にならなかった。
むしろ、アントニオーニ地獄にぐいぐいと引き込まれてしまった。
スティーヴ・コクラン演じる主人公の男はかなり横暴なキャラで、(内縁の)妻に暴力ばかり振るっている。
とてもじゃないが、共感できるような主人公ではない。
しかしただ単に乱暴な亭主かと言えばそうでもない。
一人娘をかわいがったり、妻に捨てられ弱いところを見せたりするのだ。
主人公の見せるこの「ギャップ」がとてもよかった。
妻に捨てられ、小さい娘を連れて「さすらい」の旅に出る辺りから、“ロードムービー”的な色を帯びてくる。
旅先で仕事を見つけるのだが、娘のことを考えて仕事をするのをやめてしまう。
なんて娘想いの父親なんだ・・・と思いきや、今度は唐突に娘を母親の元へ送ってしまったりと相変わらずハチャメチャな主人公。
そして最後は悲劇的な結末を迎えてしまう。
結局、最後まで優しい人なんだか何なんだか分からないキャラで、最後まで主人公に対して共感することができなかった。
しかし、何故だか主人公に対して愛着を感じた。
時折見せる「弱さ」みたいなものが、日頃横暴なキャラだけに際立ち、そこから人間味を感じ取ることができたからではなかろうか。
なんか最後まで救いようのない話で終始するんだけど、単純なハッピーエンドではないだけに、かえって心に残る一本となったようだ。