1.ひとつの画を記憶に残させるためにゴダールは様々な工夫を凝らす。この作品では音楽を使う。ベートーベンの弦楽四重奏で彩られる映像。突然音が消え、波の映像や列車の交錯する映像を挟んでからまたベートーベンに戻る。なんの変哲もないこれらの映像が脳裏にこびりつく。これが所謂ソニマージュの効果であろう。男が疎外感を味わうシーンでずっとベートーベンだった音楽がいきなりトム・ウェイツに!こんなにも感動的な違和感はそうざらには無い。そもそも他の誰でもなくトム・ウェイツという発想がとんでもなく素敵だ。「説明は明日する」と言って全然説明しない女。ゴダールのひきずり続ける女性観が現れているようでもあり、ゴダールの映画そのもののようでもある。