1.《ネタバレ》 ホラーとしてのクオリティは正直さほど高くはないが、中世ロシアはウクライナ地方の生活感溢れる描写がズバ抜けており相当に見応えある一篇。主人公であるキエフの神学生ホマーのぐうたら生臭坊主っぷりも実に活き活きして見事。ソ連お得意の奇麗ごとで塗り固めた共産主義万歳プロパガンダ映画とは完全に一線を画して痛快ですらある。本作ではゴーゴリの原作を忠実に素朴に描くことに傾注しているようで変にキリスト教のご利益を説いて説教・折伏する訳でもない。コレも欧米のキリスト教PR映画の多さに辟易の自分にとって新鮮な印象だった。必死に逃亡しようと試みたり、真相をバラして許しを乞おうとしたりジタバタした挙句に三日目の夜を迎え敢え無く変死を遂げるホマーの姿は運命に抗おうとして果たせずに死に行く我々人間の営みそのものを象徴するかのようだ。かといって決して陰惨ではなく、民話を思わせる朴訥さとユーモラスな語り口で見せるところが本作の秀抜な点と言えよう。ラストの妖怪大集合シーンは「ロード・オブ・ザ・リング」辺りに影響を与えているような気もする。気のせいか?でもP・ジャクソンならコレ観てても別に不思議じゃないしな。ともあれ、ウォッカからボルシチまでロシアの魅力が満載の隠れた名作に8点進呈!