4.《ネタバレ》 絵画に疎い私ですら、この映画は大変心に残る映画であった。パリのキャバレー「ムーラン・ルージュ」歌い踊り騒ぐ歓楽の世界の中で、ひたすら酒を飲みデッサンするロートレック、ショーが終わり、楽士たちが楽器を片付け、閉店が告げられてもまだそのまま。上半身から身体全体の姿に拡大されたとき、視聴者は彼が不具者であることを知らされる。とても衝撃的なシーンである。
己の醜い姿を忘れるため酒におぼれるが、それでいて彼の家は伯爵、お金には不自由しないし、絵は好きなだけ描ける。言い寄る女性は彼のお金目当て、愛しても裏切られ逃げられる。一度は自殺を試みながら、思いとどまったのはやはり絵画に対する執着だった。
この映画を見て初めて彼が単なる絵かきでなく、ポスター制作、リトグラフに貢献したことを知った。
ところで私が最初に見たときの映像はとても鮮明だった。それが今DVDで見ると何とも無惨で、夜空に輝くムーラン・ルージュの赤い風車の看板さえ、ひどくくすんでいる。家の中の人物は夜だとまったく見えないくらいだ。何としてもデジタル・リマスター版の出現を望みたい。
言い忘れたが、音楽もとてもよい。この映画の「ムーラン・ルージュの唄」は「夏の日の恋」や「ムーン・リバー」と共にパーシー・フェイス楽団の代表的な曲となった。