1.「きれいは汚い、汚いはきれい。」なんとなく彼の作品を見ると、このマクベスの中の一節が頭をよぎります。ビジュアルにしたって内容にしたって、普通の感覚からしたら気持ち悪いんですよ。(画面の色彩は飛びぬけて美しいと思うのですが)耽美映画が好きな私でも相当引きます。でも、我々が「醜悪だ」と目をそむけてしまう対象を、監督は淡々と、ごく当たり前のように扱う。こんなに己の欲望に忠実に映画を撮る監督もいないんじゃないか、というほど監督の趣味が画面から匂いたっているのに、ちっとも押し付けがましいところや説教くさいところがない。だからアルモドバルって好きなんだよなぁ。あなたの倫理観ってどうよ!と思わないでもないんですが。回顧・現在・劇中映画、と虚実混濁して、しかも事実が基になっていると聞けば、「どこまで本当なんですか?」とぜひとも問いただしたいですね。