1.《ネタバレ》 【なにわ君】さん、ぼくはかなり以前に見たっきりですけど、この映画が大好きなんです! 地下鉄工事現場で謎の宇宙船が発見され、触れた者は奇怪な幻覚に錯乱状態になるという序盤から、何となく『ミミック』を想わせるサスペンスフルな趣にもうワクワク・ドキドキ。やがてその幻覚が火星人の「思念パワー」によるもので、宇宙船の中から巨大な昆虫型の火星人の死骸が現れ、博士が火星での「最終戦争」のカタストロフィを“幻視”するあたり、「ああ、エメリッヒの『インデペンデンス・デイ』でもこの設定を頂戴していたっけ」と、もう完全にストーリーに没入。そして火星人の思念パワーが全開となり、ロンドンの街に邪悪なエネルギーが実体化して人々を狂乱させるクライマックスは、トビー・フーパーの『スペース・バンパイア』と同じじゃん! と大興奮でありました。何より、あのゆらゆらとそびえるエネルギーの塊の、実に「悪魔」的な視覚イメージの卓抜さ!
そう、このたいして予算もかかっていそうにないSFスリラーは、前述の通り、その後に作られた数々の大作映画の「原典(オリジン)」として、未だその魅力を喪っていないとぼくは思っています。いわゆる「侵略ものSF」でありながら、エイリアンを未知の怪物とせず、“攻撃本能”と“憎悪”の感情の増幅されたもの、とするあたり、これがまぎれもないH・G・ウェルズの『宇宙戦争』の、巧妙な翻案であることを証明するものでありましょう。そしてウェルズの小説が、戦争と破壊の「黙示録的世紀」だった20世紀への予言と警鐘として読み得るように、この映画もまた、ひとつの「アポカリプス」の現前化として創られていることを、ぼくは信じて疑いません。
…クライマックスで、あの巨大なエネルギーの塊を「アース線」の原理で“消滅”させるあたりも、戦いの神「マルス(=火星)」に対する地球(=アース)の勝利を謳う《寓話》としてお見事! 怪奇ゲテモノ映画専門のハマー・フィルム製作であるこの作品、なかなかどうしてスミに置けない小さな大傑作だと思いますですよ。