1.《ネタバレ》 イラン製のオムニバス。第一話『ハッワ』、9歳の誕生日を迎え女になるハッワは、彼女にチャドルを被せようとする母や祖母とは裏腹に遊びたくて仕方がない。そこで棒を地面に立たせその影が消えて無くなる昼までに帰ってくるという約束で、遊びに出かけたハッワだったが…。イランの戒律をテーマにしたユニークな小品。劇中での一時間という制約とは裏腹に、世間の忙しい時間を忘れさせてくれるほのぼのとした可愛らしい一編です。第二話『アフー』、ひたすら馬と自転車で走り続けるフルスピードな作品。これぞまさにノンストップ。そもそも何故彼女があんなに必死に自転車を漕いでいるのか分からない、どうやら家族から逃げているらしいが…そんなことはどうでも良い。普段から愛用している同じ自転車乗りとしては、ただ単純に走るという行為自体が共感できるものがありました。ラストは悲しい、それでもカメラは止まることなく走り続ける。第三話『フーラ』、荷物運びに精を出す少年たち。どこかから入ってきた遺産で次々と欲しい物を買っていく老婆、しかしどうしても一つだけ欲しい物が思い出せない。思い出せないって、一目瞭然なんですけど(笑)。家庭用品一式が海辺にポツンと並んでいる光景からしてシュール、そもそも何にも無い海辺でどうやって掃除機や洗濯機を作動させているのか。ここに来てようやく三本の物語が一つに繋がっているということを知り脱帽しました。「何か映画を観たいけれど、なるべく面倒臭くないものが良い」という方にお薦めです。