1.《ネタバレ》 岡本喜八が東宝を離れてATGで撮った知る人ぞ知る異色作、彼は明治維新を評価しないことが知られているが、その明治維新の欺瞞性を官軍側視点で撮った『赤毛』の反歌のように戊辰戦争を賊軍のストーリーとして語っているとも言えます。 百姓の仙太と官軍と賊軍の狭間を行ったり来たりしている万次郎のコンビネーションがもう可笑しくてしょうがないです。巨根を持て余しヤルことしか頭のない仙太、ATGらしく東宝じゃ考えられない下ネタが散りばめられているのも愉しいところかな。ところがそんなおふざけだけじゃ無く、戊辰戦争で起こった史実も巧みに取り入れているストーリーテリングがまた巧みです。世良修蔵の阿武隈川岸での斬首、そして山川大蔵の彼岸獅子の行列に扮しての鶴ヶ城入場など、この入場は嘘みたいなほんとの話です。後半は細谷十太夫=高橋悦史の博徒を組織化したからす組の活躍がメインになりますが、この高橋悦史が実にカッコイイんです。土方歳三=仲代達矢もカッコイイんだけど、冒頭だけのカメオ出演だったのは残念。本作は仙太や万次郎と女郎やからす組隊員たち以外はみな実在の人物みたいです。官軍の残虐行為だけじゃなく、賊軍=仙台藩のだらしなさぶりもきっちりと描いていて、一種の革命だったとは言え戦争の非人道性・虚しさは訴えるものがありました。