1.《ネタバレ》 独特の映像処理を施されたオーケストラが奏でる音楽、合唱は聞きなれない音楽にも関わらず、あまりの躍動感に脳裏に焼きついて離れない。また、この曲がルコントの映し出すカンボジアの圧倒的な生命力と広大な風景に奇跡的に融合する。内戦により徹底的に傷つけられ、貧困に喘ぐ人々の生活をまるで彼らの叫びのような「DOGORA」という曲に乗せ、ただただ静かに追い続ける。何万という地雷が眠る大地に、抜け出せない貧困のスパイラルの中、たとえ悪臭とダイオキシンの漂うゴミの山を漁ってでも生きようとする人間の本能が悲しくも壮絶であるし、そこに生まれてくる子供たちはこの世界が全てであるかのように無邪気に生きていくのであろう。しかし、こういった絶望的な生活の中ででも人々は活気に溢れ、生を全うしている。この悲惨な状況とは比べようもないのだが、今の僕や日本とどちらが幸せなのだろうか?とふと思う。それほど、彼らの生活や雄大な景色、特に子供たちの姿に感動してしまうのだ。川沿いを延々と歩く少女の行く末には川の中に点々と建つ、あばら屋、不謹慎だがとても美しいと思えたし、足の届かない大人の自転車を乗りこなす少女の逞しさには昭和の記憶にも繋がる。土手にちょこんと座る子供たちが見つめる霞むように輝く荘厳な風景に息を飲んだ。あどけない子供たちの生気に満ちた目がとても印象的である。でも、この作品に点数を付けるとなると困惑する。この作品よりもっと饒舌にもっと幅広く表現したドキュメンタリー作品はたくさんあるだろう。美しい風景の中、貧しい人々が織り成す、生の営みや渇望を切り抜き「DOGORA」という稀有な音楽と融合させた、この作品をどう捉えるのか。難しい・・・。