5.導入部分は良くも悪くも石井節フルパワーで無意味。
前半部分のダメ男の遍歴はすばらしい。不思議と素直に受け入れられる話だったので「俺もダメ人間になったのかなあ」としんみり。石井監督の過剰なエロさがうまくこなれていて、つげ作品の雰囲気ともうまくかみ合い、独自の境地を切り開いていたと思います。
終盤(左腕の血管が切れてから)はちょっと不満が残ります。つげ作品の中ではかなりハリウッド的(?)な物語が下敷きなので、本来映画向きの話なのかもしれませんが、それまで作り上げてきた映像の雰囲気からは若干飛躍があると感じました。
全体的に見て、石井監督のエロで飾られた暴力的な表現衝動と、つげ義春の大脳旧皮質的視点で描かれた日常とが融和した、非常にユニークな作品だと思います。