29.《ネタバレ》 この映画を初めて観たとき、突然、暗闇の中からハリーが照らし出されたあの場面は、衝撃でした。繰り返し観てもくぎずけになる。 地下道での画面いっぱいに響く流れる水、人の声の響き、光と影の不気味さ。いい古されているけど、あえて言いたくなる素晴らしさ。 この監督の「落ちた偶像」と「邪魔者は殺せ」も、面白かった。どれも愛に対して一途な女性が出てくる。この映画のアンナも愛する人を死に追いやった人達は、許せない。待ち受ける男に、目もやらずに場面から消え去る。名シーンです。 【kirari】さん [DVD(字幕)] 8点(2021-09-20 20:26:35) |
28.《ネタバレ》 アントン・カラスの『ハリー・ライムのテーマ』や長回しのラスト・シーンであまりにも有名な映画。あのラスト・シーンは、個人的には映画史上最高のラスト・シーンだと思っています。グレアム・グリーンが書き下ろした脚本は、ジャンルとしてはフィルムノワールに分類されるかと思いますが、本家ハリウッドのノワールとは趣を異にする英国風味が特徴。舞台が占領下のウィーン(まだオーストリア国家の主権が回復されていないころ)で、登場人物の国籍も米・英・ソ・墺・ルーマニア・チェコスロバキアと国際色豊かで、まだ瓦礫が方々に残っているウィーンでロケしているのも貴重です。オスカー受賞した映像は大戦後にドイツ表現主義を復興させたような完璧な構図の数々、とくに夜間撮影の素晴らしさも映画史上最高かもしれません。最近の下手クソな撮影監督による何が映っているのかさっぱり判らない夜間撮影に比すと、モノクロ撮影ながら闇は闇、淡いながらも光が当たる部分はくっきりと見せる匠の技、とくに闇の中からオーソン・ウェルズの異相が突然にスクリーンに映し出される瞬間は鳥肌ものです。あとハリー・ライムの共犯者たちやアパートの管理人などの脇のキャラに、癖の強い顔の役者を揃えてそのアップショットが多いのも特徴でしょう。いちおう主人公と言えるのはジョセフ・コットンが演じる三流作家なんですけど、こいつが事件解決の糸口を作るけどハードボイルドとはほど遠いグダグダな男で、ライムを警察に売ってしまうのはなんか後味が悪い。ラストでまだ未練たっぷりのアリダ・ヴァリに強烈なしっぺ返しを喰らったのは、当然と言えば当然の結末だと思いますよ(笑)。 【S&S】さん [CS・衛星(字幕)] 8点(2021-09-12 22:25:22) |
27.今までに三回見た印象で言うと、見れば見るほど面白く見ることが出来る映画。しかし点数をつけるのは難しい。 ストーリーはしっかりしていて決して悪くないし、当時では画期的で芸術さをも感じるような構図や印象的なカットが沢山あって、後世に影響を与えたと言われているのも頷ける。 ただ、それが見事すぎるのか、自分自身であまりこの作品は楽しめる好きな映画とは言えないのである。筋書も仕掛けも素晴らしく感じるし見るたびに良い作品と感じるのだが、映画にのめり込めないし何だかお気に入りにはなりそうもない。 考えるに、カメラワークなどの演出が目に入る故に気が逸れてしまい、第三者目線で見てしまったので感情移入も出来なくて物足りない印象が残ってしまうように思う。 全てを充たす映画ではないが、映画が好きな人には一度と言わず幾度か見てほしい作品。 【さわき】さん [地上波(字幕)] 8点(2016-12-29 21:21:33) |
26.《ネタバレ》 キャロル・リードは「二つの世界の男」と「フォロー・ミー」は文句なしの傑作だと思うが、この「第三の男」はやや完璧すぎるし、影の演出のあざとさも気になる。 淡々と謎を解き明かしていく流れ、オーソン・ウェルズの登場シーンや地下水道での追走劇も計算され尽くしている。 加えて、プロデューサーのデヴィッド・O・セルズニックの演出。 この男はどんな作品でも必ずと言っていいほど三角関係をねじ込んでくる。 「キングコング」で怪獣、男、女の三角関係を描いた男だ。当然「第三の男」も小説家、女、闇の住人の三角関係に発展していく。 第二次大戦後の暗い影が付きまとうこの映画。 戦後の新しい時代の白い「光」、社会の黒い「闇」の世界。 日夜問わずにこの白と黒がせめぎ合うサスペンス。 そこにシンプルな音楽の調べが何とも言えない雰囲気を作り出す。 友人の不可解な「謎」を追ってウィーン市内を渡り歩く主人公。 事件の真相を追うのは友情か、それとも作家としての好奇心か。 途中で出会った謎の女性。 友人について知っているらしいが、彼女にも暗い影が見え隠れしている。 様々な国が入り乱れて統治するウィーンの街は、戦後の混沌を表す良い見本だ。 そして主人公の前に現れる「第三の男」。 音楽のリズムが一気に変化し、暗闇から姿を表す。 こんなにドキドキする登場シーンはそうそうないぜ。 主人公と「第三の男」との駆け引きは徐々に激しさを増し、下水道を縦横無尽に駆け巡るラストまでの流れは惚れ惚れする。 光の中に生きる者と、闇にしか生きられなくなった者、それぞれの顛末。 それはコインの裏表のように、常にひっくり返される存在なのだ。 ラストの舗道のシーンは良いね。何度見ても。 【すかあふえいす】さん [DVD(字幕)] 8点(2014-01-25 13:23:33) |
25.《ネタバレ》 主人公ホリーが車で拉致されたのかと思いきや、連れていかれたのはすっかり忘れていた講演会。 このあたりの展開はうまい。 親友ハリーが水増しペニシリンを使って重大な被害を出し、その悪事のために殺された。 と思っていたら、一瞬ライトに照らし出されて、生きていたことがわかる。 オーソン・ウェルズの不敵な面構えがハリー役にぴったり。 意外な展開で、サスペンスの教科書といってもいい。 並木道でアンナがホリーを無視して素通りしていくラストシーンは、美しく余韻が残る。 一見ミスマッチに感じる明るい音楽も、かえって哀愁を誘っている。 【飛鳥】さん [DVD(字幕)] 8点(2013-05-31 00:14:03) |
24.《ネタバレ》 ただのストーリーを追う、どんでん返しの王道なミステリーならこんなに評価されなかったでしょう、友を思う友情もそうですが、みなさんのおっしゃる、画の美しさ、最期のラスト、見事と言うほかありませんでした。シリアスな場面でも容赦なく入る、変に陽気なテーマソングが耳から離れないのは自分だけ? 【min】さん [DVD(字幕)] 8点(2013-03-18 03:07:16) |
23.展開でしっかり魅せる映画。ワクワクしてしまう 【ギャングスター】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-12-16 11:50:47) |
22.《ネタバレ》 ありきたりだが、映画の教科書といえる作品です。複雑ではないがしっかり伏線も張られているし、隙のない展開、緊迫感のあるお芝居も引き付けられるものがある。そして、モノトーンの魅力を余す所なく発揮している照明も素晴しかった。トンネルに迫る影、人物に落とす濃い陰影などは見事に光を操っていた。現在の映画が、このような作品を踏襲し、進化しているという事はいうまでもないだろう。やはり、この時代(1949)の映画という事であれば、評価しなければと思います。 【ポテサラ頂戴】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-10-29 14:15:44) |
21.もしこの作品がサスペンス作品の原体験だったなら多分惜しみなく10点をつけていたと思います。逆に言えばこの作品が後世の作品に与えた影響がそれだけ大きかったと言えるのかも。残念ながら既に様々な作品を鑑賞した後だっただけに話の流れが読めてしまいましたが、戦前にこれだけの映画が存在したという事にびっくりしました。 【MEL】さん [DVD(字幕)] 8点(2006-09-07 22:41:08) |
20.《ネタバレ》 オーソンウェルズが出てきてからは、物語が一気に加速しますが、この映画全体の雰囲気を考えて、あえてほのぼの系の音楽を流すあたりや、影を計算した見事な夜闇の映像などで本作は見れば見るほど味わいの深い良質な映画に仕上がっている。 【ジャザガダ~ン】さん [DVD(字幕)] 8点(2005-10-31 23:48:07) |
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19.《ネタバレ》 最初のほうにヒントが多すぎるので、オチが読めてしまった。でも、登場シーンの素晴らしさで帳消しです。あとは、ラストシーンの写真みたいな構図が素晴らしすぎです。あの画面を切り取って部屋に飾っときたいくらい。 |
18.《ネタバレ》 他の方々も仰ってますがとにかく光と影のコントラストが素晴らしい!建物の形状や人間の構造をすべて熟知しているかのごとく美しい。それにやはりここまで素晴らしいのはモノクロの映像という点。無駄な色がない分余計に光の当たり具合、影の付き具合が美しい。勿論それを捕えるカメラのアングルもまた素晴らしい。また誰もが一度は耳にしたことがあるであろうテーマ曲や、徐々に深まる謎、そしてラストのオーソン・ウェルズの息をも吐かせぬ逃走劇、映画の娯楽性と芸術性が見事に共存している映画です。 |
17.ストーリーはパッとしないが、カメラアングルや明暗の素晴らしさに何度も唸らされながら見た。セリフも音楽も邪魔でしかない、一冊の写真集としての重さが心にずっと残ってる。 【うこっけい】さん 8点(2004-05-23 22:00:32) |
【クルン】さん 8点(2004-02-26 00:13:16) |
15.無茶苦茶面白い娯楽作品で、且つ芸術性も備えた映画。アメリカなら『ゴッドファーザー』、日本なら『七人の侍』。そしてイギリスはこの『第三の男』。ラストシーンはあざとすぎると分かってはいてもやはりかっこいい。あの煙草を投げ捨てる仕草といったら! 【藤村】さん 8点(2004-02-12 21:59:34) |
14.《ネタバレ》 第三の男は誰だ?というサスペンスを巧みに盛り上げながらも、謎解きに終止することなく、重厚な人間ドラマに仕立てていく展開が実に見事です。それどころか、むしろこの映画におけるサスペンスという要素は、後半の愛憎ドラマの序章にすぎないと言えるでしょう。軍からペニシリンを盗み出し、水で薄めて売りつける。使用した患者は精神をヤラれるか、死に至る。こんな悪行を重ねる犯罪者は友人でもあり、愛しい人の恋人でもある。オーソンウェルズの才能は疑うべくもありませんが、難しい立場を演じるジョセフコットンもやはり名演です。結局、彼は犯罪を許さじと、友人を警察に売り渡すことになるのですが、アンナの一途な愛によって、善人であるはずの彼があたかも悪者のように印象づけられていく展開が、なんとも凄まじく切ない。ラスト近くの葬儀シーンは、冒頭の葬儀シーンと全く同じロケーションであるにも関わらず、同じなのはロケーションだけで、それぞれの人間関係は全く別ものに変貌しています。有名な「すれ違いの」ラストはこの差異によって導かれ、物語の奥深さを見事に暗示した、まさに映画史上屈指の名シーンです。ロバートクラスカーのキャメラも一級品で、特に下水道の追跡シーンは秀逸。ただ、時折見せる「斜めの構図」は、不安感を出すという意図は達成されているとは思いますが、少しだけ浮いて見えました。効果をあげているのは確かなのですが、なんというか、恐縮ですが、生理的に合わないという理由であの構図は駄目でした。 【スロウボート】さん 8点(2004-01-20 22:51:15) (良:3票) |
13.《ネタバレ》 オーソン・ウェルズさんの存在感とラストシーンが印象的です。おとなの世界でしょうか。 【its】さん 8点(2004-01-07 01:15:10) |
12.普通に良かった。あの曲が結構シリアスな部分でも流れてたのは気になったけど・・・。 【ボーリック】さん 8点(2003-12-21 01:26:46) |
11.往年の名作の一つ。舞台はウィーン。 友人を頼ってやって来たアメリカ人小説家。しかし友人は事故で死んでしまった直後だと聞かされる。それは本当に事故なのか?調べていくうちに、不審な事実が見えてくる。友人が事故に遭ったとき、そこには医者と親友、そしてもう一人誰かがいた。 第3の男は誰かをめぐるミステリー。 よくできたプロット。切ない恋の顛末。ラストシーンは有名。 【よしの】さん 8点(2003-11-22 16:31:56) |
10.ラストで並木道を颯爽と歩き去るアリダ・ヴァリが印象的。暗闇でボーっと浮かびあがるオーソン・ウェルズの顔は忘れられない。 【fujico】さん 8点(2003-10-15 12:33:41) |