1.《ネタバレ》 何が悪くて何が良いのか。人によって所得に目の玉が飛び出るほどの格差があるのは当然なのか。
マイケル・サンデルの正義本を読んで、「いや、別に投資銀行とか証券会社は私企業なんだからトップがいくらもらおうが勝手だろう」と冷めた意見をつぶやいていた私ですが、この映画を観て、本当にそれで良いのか?と少し疑問に思いました。いや、結局彼らがいくらもらおうが勝手なのですが、彼らの仕事(金の儲け方)はやはり邪道なのではないか、と。そして、サブプライムローンというよく訳の分からないいかがわしい商品を使って大儲けする彼らの手法は外道なのではないか、と。
この映画は一貫して金融業界批判の立場ですが、かなり「論理的」なアプローチでその強欲さや残酷さ、拝金主義、権力との結びつきそして腐敗を浮き彫りにするので、最初は彼らに同情的だった私も次第に説得されてしまいました。生命保険会社やら銀行やらの倒産はどうでも良いんです。まあ自業自得だもの。でも、私の心にぐっと来たのはこの金融危機のせいで、世界中で多くの人々が職を失い、路頭に迷ったということ。この不動産バブルによって、全く利益を得られなかった(得る機会も与えられなかった!)人々の元にツケが回るという構図はどう考えても不健全だ。貧乏人たちの命をチップに変えて金持ち達がギャンブルを行うのは道徳的に問題がある。
ただし、何度も言うようにこの映画の視点は一方的なのだ。だから、この件に関する金融業界からの逆襲も見たい。金融業界はこんなに世界のみんなを幸せにしてる!っていう。だが、この業界は金持ちの業界だから、みんなを幸せにはしえないし、きっとしようとも思っていないのではないだろうか。金持ちしか得ができない仕組みになっているのなら、それは公平ではない(=悪い)仕組みではないかと私は直感する。